中小企業にとって最も大事な指標は「お金の増減」

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中小企業経営に指標分析(財務分析)は必要か?

投資には「テクニカル分析」「ファンダメンタル分析」という2つの分析手法があります。

  • テクニカル分析 
    →過去のチャートの値動き(パターン)から、今後の動きを予測
  • ファンダメンタル分析
    →景気動向、金融政策等のマクロ視点、個別企業の決算資料・ニュース等をミクロ視点で分析して、今後の動きを予測

どちらの分析手法についても、関連する投資本はたくさん出版されていて人気があります。

個人的にも投資関連本は結構読むのですが、筆者(投資家)によって、同じ指標分析(財務分析)でも重視する指標が異なるため、いったいどの指標を重視するべきか(はたまた、ファンダメンタル自体を意識しすぎないようにすべきか)判断に迷うことがあります。

と、少々話が脱線してしまいましたが、税務顧問をしていてお客様とお話をさせていただく際に、指標分析(財務分析)についてのお話をすると熱心に聞いていただけることが多いです。あまり、いい言い方ではないかもしれませんが「ウケがいい」です。

ただ、中小企業の決算書は、上場しているような企業の申告書と比較すると、もっとドロドロしています。決して悪いことをしているという意味ではなく、ある程度、申告書の見せ方を意識して経理処理の仕方を変更したりすれば、同じ取引内容だったしても出来上がる数字が変わってきたりもします。

もちろん、大事な指標分析(財務分析)もあるのですが、そのような財務諸表上の数字を使用して算出される指標分析(財務分析)は、必要以上に多く確認しなくてもいいのではないか、特に他社との比較は会計方針の違いによるところもあるので参考程度でよいのではないか、と思います。

どんな指標分析よりもまずは「お金の増減」を確認する

中小企業の場合、指標分析(財務分析)を確認するのも悪くないのですが、どんな指標分析(財務分析)よりも先に、まずご確認いただきたいのが「お金(現金預金)の残高」です。

どうしても、損益計算書(PL)の売上利益のほうに最初に目が行く経営者の方が多いと思いますが、まずは、毎期の決算書にしても、毎月の試算表にしても、まず第一に確認すべき数字は貸借対照表(BS)の現金預金です。

なぜなら、お金(現金預金)が会社を継続して経営していくうえで、最も大切だからです。

まず、毎月、お金(現金預金)を確認して、

増加している → その原因を分析するために、売上、粗利、営業利益と確認する。
減少している → その原因を分析するために、売上、利益、営業利益と確認する。

できれば、あわせて資金繰り表もあわせて確認し、資金繰り(キャッシュフロー)を基準にして数字を見ていく方が、分かりやすいですし、問題点・改善点などが見つけやすいです。

創業直後で、全く売上がないところからのスタートした会社であれば、まずは何はともあれ売上を意識することが大事ですが、いつまでも売上の増減をいちばんに考えて数字を見ていると、資金繰り上での危険サインに気が付くのが遅れてしまうことになるかもしれません。

金融機関との対話を意識してローカルベンチマークの6指標を確認する

それでも指標分析(財務分析)を使うのであれば、平成28年に経済産業省が健康診断ツールとして発表した「ローカルベンチマーク」(通称「ロカベン」)で使用されている6つの指標を定期的に確認されてはいかがでしょうか?

ローカルベンチマークとは
・企業の経営状態の把握、いわゆる「健康診断」を行うツール(道具)です。活用によって企業が抱える課題の早期発見が可能になります。
・企業の経営者等と金融機関、支援機関が、対話を通じて現状や課題を理解し、個々の企業の経営改善に向けた取組を促す手段となります。

経済産業省パンフレット「ローカルベンチマークの活用に向けて」より

金融庁は、企業の将来の成長可能性を積極的に評価する事業性評価融資を推進していますが、企業と金融機関の対話の窓口として考案されたのがローカルベンチマークであり、企業の過去の姿を映す財務情報と、企業の現在の姿を映し将来の可能性を評価する非財務情報の項目から構成されています。

その財務情報の6つの指標として使われているのが以下の指標分析(財務分析)です。

  1. 【売上持続性】売上高増加率=最新期売上高/前年度売上高-1
  2. 【収益性】営業利益率=営業利益/最新期売上高
  3. 【生産性】労働生産性=営業利益/従業員数
  4. 【健全性】EBITDA有利子負債倍率=借入金-現預金/営業利益+減価償却費
  5. 【効率性】営業運転資本回転期間=売掛債権+棚卸資産-買掛債務/月商
  6. 【安全性】自己資本比率=純資産/総資産

金融機関の融資において、決算書の数字が最も重視されることには、まだまだ、変わりはありません。

しかし、ローカルベンチマークでの総合評価点が高いことを元に、金融機関へ自社を積極的にアピールすることが、結果として、好条件での融資へとつながる可能性はあります。

そのため、上記の指標分析(財務分析)を上げれるように意識しておくのは有効だと思いますので、指標分析(財務分析)はしてみたいけど、指標として何を使うのが有効かでお悩みであれば、まずは、上記の6つの指標を使われてはいかがでしょうか。

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