言葉は似ている「前払費用」と「未払費用」。優先して対策すべきは「未払費用」

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「前払費用」と「未払費用(未払金)」とはなんぞや?

どちらも決算書類のひとつ、貸借対照表(BS)で登場する勘定科目の名称なので、名前は知っている(だけど、いまいち内容は分からない)という方がいらっしゃるかもしれません。
内容としては名称から察していただけると思いますが、めちゃめちゃざっくり説明すると

●前払費用・・・決算時点(本決算、月次決算)時点でもうお金は支払ったけど、サービスの提供はまだ受けていない。
●未払費用(未払金)・・・決算時点(本決算、月次決算)時点でまだお金は支払っていないけど、既にサービスの提供は受けた(モノは買った)。

経費(費用)になるのは、お金を支払ったタイミングではなく、サービスの提供を受けた時点です。


例えば3月決算で、4月分の事務所家賃30万円を3月中に前払いした場合には、まだ、費用にならないので「前払費用/現金預金 30万円」として一時的に貸借対照表の資産項目に「前払費用」として表示。

反対に3月分の事務所家賃30万円の支払が何らかの理由で3月末までにでてきなかったとしても、費用にはなるので「地代家賃/未払費用 30万円」として一時的に貸借対照表の負債項目に「未払費用」として表示。

要するに一定期間の損益を正しく表示するために、支払った金額が費用になるまで一時的に資産又は負債に逃がしているんだ、と考えていただければ結構です。

「短期前払費用」は節税対策して有効ではあるが…

名前が似ている両科目ですが、知名度(そんなものがあるんか?)でいえば、圧倒的に「前払費用」に軍配があがると思われます。
正確には、有名なのは「短期前払費用」です。税金関連の書籍、雑誌やネットの記事でも決算間際の節税対策として必ずと言ってよいほど登場する言葉です。

なんで節税対策で有名かというと、本来はサービスの提供を受けた(モノを買った)時点で経費(費用)になるのが原則ですが、一定の契約に基づいて継続的にサービスを受ける取引については、前払した費用のうち短期(1年以内)のものは、その支払った時点で全額経費(費用)にしてよいですよ、と認められているからです。

例えば、3月決算で、4月から翌3月までの12ヵ月分事務所家賃360万円(30万円×12)を決算間際に支払えば、本来費用にならないはずの360万円が費用になり、節税になるというカラクリ(?)です。

ただ、あくまで特例ですので、適用を受けるためには一定の要件があり、注意も必要です。

①等質等量のサービスの提供であること
代表的なのは、家賃、地代、保険料、保証料など。税理士等の顧問料、雑誌の定期購読などは対象外。
②支払った日から1年以内に提供を受けるもの
例えば2年分を前払した場合、短期(1年以内)の要件に該当しないため、原則通りの処理、つまり、全額「前払費用」に計上する必要があるため、全然節税にならなくなってしまいます。
③継続適用が条件
前期は利益が多くでそうだから年払いして「短期前払費用」を使ったけど、当期はあまり利益がでそうにないから月払に戻して原則通りの処理をしよう、と処理方法をコロコロ変えると、税務署に利益調整を指摘を受ける可能性があります。
④契約の変更が必要
契約で毎月払いとなっているのに、勝手に年払いをしてもダメ。契約自体を年払いに変更する必要あります。

まずは「未払費用(未払金)」を正しく計上できているか確認すべき

一方、「未払費用(未払金)」は別に節税対策として話題にあがる科目ではありません。
上記のざっくり説明のとおり、決算までにサービスの提供を受けた費用は、支払が決算月後であろうと費用になる、当たり前といえば当たり前の経理処理のため、「そんなのどの会社も漏れなく計上しているんじゃないの?」と思われるかもしれません。ただ、意外とできていない会社・フリーランスの方が多い印象があります。

経営者の立場からすると、決算書の損益も大切ですが、それ以上に資金繰りを意識されることのほうが多いからか、現預金の入金時に売上、出金時に費用という考えがあるのが原因かもしれません。

また、「会計事務所に顧問を頼んでいるから、間違った処理をしていれば、指摘してくれるんじゃないの?」という疑問もわくかもしれまんせんが、「未払費用(未払金)」は文字通り決算時点で未払いであるため、預金の入出金データを確認しても該当する出金履歴がでてきません。したがって、毎月又は一定期間ごとに定期的に支払がある費用を除き、計上モレに気づくことは難しいのです。

「未払費用(未払金)」の計上が正しくできていなかったとすれば、意識して正しく計上するようにするだけで、節税(?)効果はありますし、余計に手元資金が減ることもありません

状況によっては、飛び道具的に「短期前払費用」を利用してすることも有効な場面もありますが、まずは、地味ですが当たり前の「未払費用(未払金)」をお忘れなく!

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