金融機関は融資先をどのように評価しているのか?

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提出された3期分の決算・申告書で金融機関は何を見る?

金融機関は会社・事業主から融資の申込を受けると、金融機関にほぼ共通する基準、そして各金融機関独自の基準で「お金を貸せる会社か、貸せない会社か?」を判断しています。その判断基準をある程度知っておくことは、現状、銀行から融資を受けている、または、今後融資を受ける予定がある会社にとっては大切なことです。

まず、金融機関は、初めてお取引をする会社には、会社の登記簿謄本や定款などと共に、過去3期分の申告書・決算書(決算から期間が経過している場合には、試算表も)の提出を求めます。

この提出された過去3期分の申告書・決算書のデータを使っておこなっているのが「財務格付け」です。

なぜ、3期分も必要なのかというと、決算書は、ある一定期間の損益と、一時点の財産債務の状況などを表した書類なので、1期分だけでは情報不足だからです。

金融機関は会社の外部関係者なので、会社の詳細までは把握できません。
3期分の数値を比較してみて、事業は上向きか下向きか、資金繰りの状況はどうか、決算書の数字に不自然な点はないか、など見えてくることがあるため、融資の是非を判断するための材料として必要になるのです。

毎期「正常先」をキープできるように意識することが大事

そして、決算書のデータを使って「財務格付け(債権者区分)」をはじき出します。

財務格付けは、まず、決算書のデータをもとに、安全性(自己資本比率など)、収益性(売上高経常利益率など)、成長性(売上高など)、債務償還能力(債務償還年数など)など「数字」面で評価をし、そこに、経営者の能力や業界の状況など決算書には表れない部分の評価を加味して決定されます。

債権者区分正常先要注意先(要管理先)破綻懸念先実質破綻先(破綻先)
財務格付け1~67~8910

その結果として、財務格付けは10区分(債務者区分としては5~6区分)に分類されます。
各金融機関ごとの独自の基準については、詳細までは分からないところはありますが、ある金融機関で正常先と判定されたものが、他の金融機関で破綻懸念先と判定されるといった、極端な違いは生じないでしょう。

その債権者区分で要注意先のうち「要管理先」以下と判断されてしまうと、融資が厳しくなりますので、新規で融資を受ける、融資を継続して受けるためには、債権者区分において「正常先」をキープし続けることが大切です。

なお、「正常先」とは業績が好調、財務内容も問題がない融資先のことで、目安としては

  • 債務超過ではない(BS)
  • 赤字ではない(PL)

状態です。そのため、融資が全く必要ない、という会社を除き、銀行融資も意識して、毎期利益を出し、自己資本を積み増していくことを目指しましょう!

決算書の内容は実質的な価値でも評価されるため小細工は通用しない

財務格付けにおいて、決算書の数字面の評価と数字以外の会社全体の評価では、重要なのは、やはり数字面の評価です。

その重要性を知っているからこそ、会社によっては、在庫を調整したり、売上を水増ししたり、減価償却費を計上しなかったり、経費を除外して社長の貸付金や仮払金扱いにしたりと、あの手この手を使って業績を粉飾してしまう事態が生じるのです。

しかし、金融機関の方々もプロなので、粉飾とは言わないまでも、中小企業の決算書が多かれ少なかれ調整(?)されていることは承知です。

そのため、会社から提出された決算書の数字をそのまま評価に使うだけでなく、実質的な価値に修正した上での評価も行います。粉飾ではないにしても、例えば、

  • 不良債権、不良在庫の有無 → 売掛金で回収不能、在庫で陳腐化しているものがあればマイナス
  • 謎の仮払金や役員貸付金 → 実際に資産価値がないのであればマイナス
  • 時価と差額がある固定資産や有価証券 → 時価評価をして含み損をマイナス

などの事実があれば申告書の数字を調整します。その結果、決算書のうえでは債務超過でなかったとしても、実質的な価値では債務超過となり、想定していたよりも格付けが低くなってしまうこともあり得るのです。

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