制度開始後、売手として発行したインボイスを保存する必要あり
経費として落とすために必要だから、面倒だけど請求書や領収書をかき集め、経理処理後は場所を取って邪魔だけど、その請求書・領収書の束を保存していることでしょう。
2023年10月1日にインボイス制度がスタートし、自社(自身)がインボイス発行事業者になると、買手として受け取った請求書等だけでなく、売手として自社(自身)が発行したインボイスの写しを保存しなければいけません。
★インボイスの交付義務
適格請求書(インボイス)⇒ 買手(課税事業者)の求めに応じて交付する義務
適格返還請求書(返還インボイス)⇒ 返品や値引き等があった場合に交付する義務
修正した適格請求書(修正インボイス)⇒ 交付済のインボイスに誤りがあった場合に交付する義務
★インボイス写しの保存義務
いままでは、売手として自社(自身)が交付した請求書の保存については、あまり意識していなかったと思います。しかし、今後は、
作成⇒書面で郵送(データで送付)⇒保存
と業務フローに発行後のインボイスの「保存」を加える必要があります。
- 適格請求書発行事業者の登録
- 売上の相手先に発行している書類の確認
- 現状、発行している請求書等の記載内容をインボイスの要件を満たすように変更する
- インボイスの発行方法(紙orデータ)と保存方法(紙orデータ)を決める
現時点で、まだ何も対応していない、という事業者の方は、売手としては、上記の手順に沿ってインボイス制度への準備をすすめていただきたいのですが、今回は、その手順のうち❹「インボイスの発行方法(紙orデータ)と保存方法(紙orデータ)を決める」についてご紹介させていただきます。
インボイスを書面orデータどちらで発行するか、で保存方法が変わる
書面で発行する場合は、原則「紙」で保存、「データ」のまま保存も可能
請求書発行システムや、Excel・Word等のソフト使用して作成したインボイスを出力して、書面で発行した場合には、原則的には紙に出力したインボイスの写し※を保存します。
一方、出力した書面でなく、データのままで保存することも可能ですが、データで保存するためには、電子帳簿保存法という法律に規定されている要件を満たす必要があります。
★システム関係書類(システム概要書、操作説明書、事務処理マニュアル等)の備え付けておく
★PC、ソフト、ディスプレイ、プリンタ、それらに関する操作説明書を備え付け、データを出力できるようにしておく
★税務調査の際に、データを提示、提供できるようにしておくか、取引年月日、その他の日付を検索条件として設定できること(日付については範囲を指定して条件設定できること)
具体的な要件は上記の通りですが、一般的な請求書発行システムであれば、システム関係書類(これはオンラインマニュアルやオンラインヘルプ機能があればOK)はソフト組み込まれているでしょうし、データの提供や日付による検索もできるでしょうから、敷居は高くありません。
自分は仕事場にプリンタがないため、本当はデータ保存の要件を満たしませんが、まぁ、実際に調査があった際にプリンタを用意すればいいかと….(^_-)-☆
インボイスを交付する件数が多い場合には特に、書面で保存は場所も手間もかかりますので、データ保存がよいのではないでしょうか?
電子データで発行する場合は、「データ」保存一択(猶予期間中は「紙」保存も可能)
一方、インボイスを電子データで送付する場合には、電子帳簿保存法の電子取引に該当するので、基本的に※電子データでの保存一択です。
しかし、これまた、単に発行したインボイスのPDFデータを自身のPCフォルダや自社サーバーに保存しておけばいいのか、というと、そう単純でなく、電子帳簿保存法(電子取引)の要件に従って保存しなければいけません。具体的に法律のまま記載すると分かりづらいので簡単に記載すると、以下のいずれかの措置を取った上で保存しなければいけません。
(1)真実性の要件 ※A~Dのうちいずれかの措置を行うこと
A 電子データ送付前にタイムスタンプが付し、その電子データを送付する
B 電子データを送付後(又は事務処理規定に係る期間経過後)、速やかに電子データにタイムスタンプを付す
C 訂正削除を行った場合に記録が残る又は訂正削除ができないシステムを利用
D 事務処理規定を定め、その規定に従って運用する
(2)可視性の要件
・システム概要書類の備え付け(自社開発プログラムを使用する場合)
・PC、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルの備え付け
・検索機能の確保(日付、金額、取引先を検索条件とし、2つ以上の組合せで検索ができ、日付又は金額は範囲を指定して検索できること)
具体的な要件は上記の通りです。(1)真実性の要件のうちいずれか1つの措置を講じたうえで、(2)のそれぞれの要件を満たさなければいけません。
書面で送付したインボイスをデータのまま保存するよりは難易度が高いですね。そのため、この電子保存の手間を嫌って「インボイスは紙で送付して、紙で保存」もありだとは思います。ただ、対応としては少々後ろ向きですね。
どうしても少々手間はかかりますが、お金をかけないで電子保存を実現するには、(1)はDの事務処理規定を定め、その規定に従って運用で対応し、(2)の検索機能の確保はファイル名自体を検索条件にリネイムするか、Excelで検索簿を作成することで対応できます。
この方法については、以前、過去記事に書いているので、よろしければご参照ください。
参考までに、私自身は、どの方法がいちばん楽に対応できるか検証するため、現状、上記の(1)D+(2)Excel検索簿で対応する方法と、会計ソフトとして使用しているマネーフォワードが提供しているクラウド請求書+クラウドBOXで対応する方法を併用しています。
マネーフォワードで対応する場合の業務フローとしては、以下の通り、ほぼ全自動です。
❶クラウド請求書で請求書を作成し、ソフト上で、相手先へ請求書を直接メール送信(相手は送付されたメールに記載されているURLから請求書データをダウンロードする)
❷メール送信と同時に、請求書データが自動でクラウドBOXへ送られ、保存される【タイムスタンプが付され((1)Bの要件を満たす)日付、金額、取引先のデータは自動入力される((2)検索機能の確保の要件を満たす)】
マネーフォワードクラウド会計を使用していれば、クラウド請求書、クラウドBOXは追加料金なしで使えるので、現状は、この方法が一番楽かなぁ、と思っております。