今更ながら映画『ノルウェイの森』を観て思う、「想像(妄想)を超えていくのは難しい」と。

15年ほど前にやっていたブログは、音楽、映画、小説などを主な題材とした趣味色満載のものでした。

当時の記事の元データのバックアップも取っておらず、ブログ自体も削除してしまったので、今となっては結構、後悔していますが、当時はそのブログのネタ探しってこともあり、エンタメ系のアンテナはかなりビンビンに立ってました。

しかし、ここ数年は、映画を観る頻度も、音楽を聴く時間も、小説を読まずという生活を送っていたため、とても最近のエンタメ情報にはついていけていません。

そんなこんなで、ホントに今更ではあるのですが、いつかは観てみようと思っていながら観れていなかった、映画『ノルウェイの森』を鑑賞した件につき、少々語らせてください。

目次

思い入れのある作品が、別の形で表現されるとなかなか受け入れがたい

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当時、『ノルウェイの森』の映画化が許可されたというニュースを聞いたときは、ハリウッドで『ドラゴンボール』が映画化、最近で言えばNetflixで 『 カウボーイビバップ 』 が実写化決定というニュースを聞いたときと同様に「マジか!」という衝撃を受けたものです。(ちなみにハリウッド版『ドラゴンボール』、Netflix版 『 カウボーイビバップ 』 は一生観ることはないでしょう。)

つまり、アニメの実写化と同様に、あの小説の世界観を映像にするのは不可能ではないか、という思いがあったからです。村上春樹さんの小説は言うまでもなく熱烈なファンが多いだけに、余計にそう思われた方も多かったのではないでしょうか?

実際に当時のレビューも、結構辛口の評価が多かったような記憶があります。

僕自身は村上春樹さんの小説は好きで『風の歌を聴け』 ノルウェイの森 ダンスダンスダンス 海辺のカフカ などを読んではいますが、熱狂的なファンという訳ではありません。10代の頃は、同じ村上でも村上龍さんの作品をより好んで読んでいました。

とは言え 『 ノルウェイの森 』 が格別に好きな作品の一つであることは間違いなく、ことある事に本棚から引っ張りだしては読み返していました。特に精神障害を抱えるパートナーと出会い、共に生活をしてきたこともあり、10代で初めて読んだとき、そして20代で読み返していたときに受けた印象とまた違った印象をこの小説から感じ取るようになっていました。

だからこそです。

思い入れのある作品が、別の形で表現されるとなかなか受け入れられないんですよね。先に話題に出した 『 ドラゴンボール 』 の実写版(これは酷かったようですが)もそうなんですけど、原作が活字であればなおさらです。

もう、イメージの中で、それぞれの登場人物像が最高の形で映像化できてしまっているからです。想像には諸々の制限はありませんから、この頭の中にできあがっている最高の映像を超えるのは並大抵の作品では到底無理なのは当たり前です。

*今更なので、ネタバレも問題ないかとおもいますが、もしこれから映画をご覧になるかたは、以下は読まないでくださいねm(_ _)m

決して悪くない!「ただ、ここは●●だったら…」と感じた点

そういった僕の中でのハードルが上がりきった視点から評価すると、この映画版『ノルウェイの森』は非常によくできてていたのではないかと思います。映像美へのこだわりは小説の世界観を崩していないし、トラン監督の同小説に対する愛情を感じ取ることができました。

ただ、やはり、想像(妄想)を超えてきませんでした。

そんな 小説『 ノルウェイの森 』 のいちファンとして、よかったけど「ここは●●だったらなぁ…」と感じた点をいくつか書かせていただきます。

菊池凛子さんは思っていた以上にハマっていた

確か、映画公開当初のレビューでは、の菊池凛子さんは直子のイメージと違う、水原希子さんの緑は結構良かったという感想が多かったような記憶があるのですが、菊池凛子さんの年齢不詳な感じの漂う雰囲気は、精神に障害を抱えている危うさや不安定さを上手く表現していると感じました。

終盤にあったいっけん過剰とも取れる泣きの演技なども、あれは過剰でもなく、自然な表現であることを、今の僕には分かります。

ただ、あのストーリーだと原作を読んだことがない人は、直子が精神障害を抱えていることは、相当後にならないと分からないですね。

冒頭の飛行機の着陸のシーンは映像化して欲しかった

あの場面は、必要なような気がします。小説を読まれたことのある方の頭には、あの着陸し、キャビンアテンダントに話しかけられるシーンが出来ていると思えるほど、映像が鮮明に頭に浮かぶので。

2時間でこの小説を描くのはやはりキツイ。バッサリ切っても良かったのでは!

小説に忠実に、とても丁寧に映画化されているが故に、どうもストーリーが淡々と進んでいってしまう印象を受けました。短い時間で描くのは難しいので、ここはキスギの自殺のシーンや、ナガサワさんの話はこの際バッサリ切るとか(あまりナガサワさんのカリスマ性が伝わらなかった)したら良かったかも。逆にレイコさんの過去の話は入れないと、最後のワタナベとのシーンがただSEXをしにきたみたいな印象になってしまっていたので、ちょっと残念。

マツケンは健闘していた

単純に演技が上手いと思いました。

と、こんな感じです。決して悪くはなかったけど、「お前もっとやれるだろ!」てな感じでしょうかね。まぁ、仕方ないですよ、これは。あれだけの人気小説を映像化したわけですから。原作を愛する人々の頭のなかには、それぞれの「ノルウェイの森」の最高の映像化が既に済んでしまっているのですから。

その想像(妄想)を超えるのは、そう簡単ではありません。

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