先日、とある方がtwitterで紹介している記事に目が止まりました。そのタイトルは
『新生活!ボダにだけは気をつけろ!』
まず、このタイトルだけを見て、内容を理解出来る人は、まぁ少ないでしょう。そして、その意味が分からない人がことタイトルを見て受け取る印象は、間違いなくネガティブなものでしょう。「あ、何か注意するべきことが書かれているんだろうな!」と読者は警戒心を持って文章を読むに違いありません。
元の記事は、言論プラットフォーム「アゴラ」にアップされているので、興味のあるかたは本文を読んでみてください。
記事の全文はコチラ→『新生活!ボダにだけは気をつけろ!』
どうですか?
この記事を執筆されているのは、純丘曜彰(すみおか てるあき)さんという方だ。ウィキペディアで経歴を見てみると、東京大学を卒業されていたり、大学で客員教授をされていたり、論文や小説などを執筆されていたりと、かなり多才な方のようだ。実際、かなり頭は切れる人なのでしょう。
しかし、そんな方がなぜこのような記事を書いたのか、その意図がわかりません。実際にこの方も、BPDの方と深く接した経験があるのだろうか?
それであればこのような記事を書く権利はあると思います。あくまで権利ですが。
内容を下手に要約していまうと、全文から受け取る印象とは異なってしまうと思うので避けます。僕は内容自体はあながち間違ったことを言っている訳ではないと思います。むしろ的確にBPDの特徴を挙げています。知識がない方が、BPDの方と深く関わろうとするのは実際に危険なことなので、境界性パーソナリティ障害のことをご存知無いかたに、注意を喚起する意味では、これくらい読み手の恐怖心を煽った書き方のほうがインパクトあると思いますし、効果があります。
しかし、その内容はあまりに差別的です。僕が指摘したいのは次の3点です。
①境界性パーソナリティ障害を患っている人のことを「ボダ」、彼らが標的にした人物のことを「タゲ」と表記していること。
②「ストーカーやセクハラ・パワハラ、結婚詐欺、宗教洗脳をはじめとして、芸能醜聞や社会事件でも、このボダが元凶となっていると思われる問題が近年はあまりに多い。」という記載。
③上司や部下、同僚、クラスメイト、御近所の人で、「ありがとう」「ごめんなさい」を言わない、時や場もわきまえずにベタベタと近寄ってくる、やたらプライベートな話に踏み込んでくる、人のことを激烈に批判する、深夜の電話や長文のメールなど、公私の区別がおかしいやつがいたら、要注意だ。
まず、①ですが、この「ボダ」「タゲ」といった言葉は、境界性パーソナリティ障害(BPD=ボーダーライン・パーソナリティ・ディスオーダー)を抱える人又はその周りの人達は普通に使う言葉です。しかし、それは、ある意味、限られた範囲内であるから使うことが許される言葉だと思います。純丘さんの文章では、「タゲ」=彼らが標的にした人物と表現していますが、これを見た人は、「ターゲットにされる→『ボダ』っていうのは、危険な人物なんだな!」となるでしょう。
次に②ですが、これはよく言及されることではありますが、なにか根拠のあるデータがあるのだろうか?
僕がBPDの家族会に参加している印象、又は境界例・境界性人格障害WEB、海外ではありますがBPD CENTRALなどでの皆様の悩みを見ていると、むしろ家族関係だったり、パートナーとの関係だったり、同僚との関係だったりが主だと思います。それをストーカーやセクハラ・パワハラ、結婚詐欺、宗教洗脳などあまりに反社会的な単語を羅列することは、必要以上の差別を煽ることになります。
③も②と同じです。ボーダーは昔は、精神科や診療内科などで、よく原因が分からない人につけられた病名でもあるそうです。心について専門的な知識を持った医者でも、判断が難しいものを、たかが挨拶ができないから、ベタベタ近寄ってくるから、あいつはボーダーだ、なんて印象を持つのは、あまりにおかしな判断です。ただ、前述したように、文章全体を通してはこの先生の主張には同意するところが多いのも事実。
ボダの長い来歴の複雑で深刻な問題は、あなたの同情心程度では解決できない。それは、あなたが路上のホームレスを救えないのと同じこと。
これは、真実です。その関係に飛び込もうとするには、断固たる決意は必要なのは間違いありません。
しかし、です。
この 境界性パーソナリティ障害者=反社会的人物
というレッテルを貼るような文章はやはり、あれだけ影響力の持ってそう(?)な人が書く文章ではないです。なんか、この方の別の文章も読んでみたところ、挑発的な文章の展開の仕方が彼のスタイルのようですが、これは、国とは大企業とは組織に向けてであれば良いと思うが、個人に向けられるのは良くない。 なんだかんだ言って、いまだに世の中に認知されている「うつ病」ですら、世間の理解度は低いのだから。ましてや「境界性パーソナリティ障害」などと一見良くわからないような病気に対して、いたずらにマイナスイメージを植え付けるのはいかがなものかと思います。
実際にボダを支えているノンもいて、病の苦しみから回復しているボダもいるのだから!
オリジナル記事の投稿年月日:2012年2月26日
当記事は管理人が過去に運営していたブログ『」リー:リー:リー』に投稿した記事です。管理人のミスでブログ自体が消滅してしまいましたが、ノンボーダーとしての経験は避けることができない人生の一部であるため、元記事を若干修正のうえ、再アップさせていただいております。