日本には国家資格から民間資格まで数え切れない程の資格があり、その難易度はピンキリです。ですが、どの資格にも共通することは、資格は取得しただけでは役に立たない、ということです。それは、一般に難関な資格と言われる弁護士、公認会計士、税理士も例外ではありません。
しかし、上記の弁護士、公認会計士、税理士といった士業の目指す人々は、どうしても、まずはその資格を取得しなければいけません。難しいという理由で試験を避けていれば、その他大勢の士業の方たちと、同じ土俵で闘うことすらできません。でも、受験勉強のためには非常に多くの時間が必要です。本当は、少しでも多く実務で本当に役立つ、そしてお金を稼ぐための勉強をしたくても、受験のための勉強が長期にわたると、そのための時間やお金が勿体ないですよね。
それならば、その難関資格を短期間で突破した人のノウハウを知っておくことは、とても大切なことだと思います。本書を執筆された原尚美先生は、この長いタイトルの通り、知識ゼロから税理士試験を全ての科目を一発で合格され、現在は税理士として活躍されている方です。
僕も現在、税理士試験に向け勉強中の身ですが、本書は、税理士試験受験者はもちろん、他の資格受験者も有益な情報を得ることができるはずです。
合格まで、そして合格後の「イメージ」が大切
一般に難関資格と言われるものは、その勉強期間が1〜数年と長期に渡るため、まずは、その全体像を把握し、イメージを持つことが必要です。持っておくべきイメージは大きくわけて「時間」「お金」「夢」です。
まず「時間」ですが、どの資格も合格までの平均的な必要な勉強時間が公表されているものです。例えば税理士の場合2500時間と言われますが、この平均時間を長めに見積もり1.5倍し、「合格までの総勉強時間」を計算します。その算出した数字を自分が「一日に使える勉強時間」で割ると合格までにかかる日数が把握できます。
EX)税理士の場合 2500×1.5 ÷ 3 = 1250日
(週5日×52週で260日だから)
1250日 ÷ 260 = 4.8年
難関資格はその勉強期間が長期に渡るため、モチベーション維持が問題になるので、必要な勉強時間を把握しておくことは、大切だと思います。また、その1日の勉強時間を見積もる際には、できるだけ甘めに時間を見積もることを著者は薦めています。これは、設定した以上の時間の勉強ができたことによる得られる「充実感」が知識を向上させるためには大切だからだそうです。
次に「お金」ですが、これは単に受験費用や専門学校等の学費だけでなく、次の式で計算します。
EX)
資格取得までにかかるお金 = 仕事の時給 × 合格までの平均勉強時間 + 実費
つい、費用というと実費だけを考えてしまいがちですが、この公式のように、お金を稼げる時間を犠牲にして勉強時間も働いていると考えると、結構でかい出費ですよね。これも意識しておくと、勉強へ取り組む真剣度も一段とあがるのではないでしょうか。
最後の「夢」は、資格取得後に働いている、理想の自分をイメージするということです。所謂自己啓発でよく言われるアファメーションのようなことだと思いますが、このしっかりとしたイメージを持つことは、単にモチベーションを上げるという意味以上の意味を持っていると僕は思います。
「本番で点をとれる力」を身に付けるための勉強法
資格試験の勉強をしていて、一番気になるのが、勉強方法ですよね。僕も今年が税理士試験2年目の挑戦ですが、1年目はひたすら必死に問題を解く練習をしており、「効率的」な勉強方法を考える余裕すらありませんでした。今年は自分なりの方法がある程度確立されペース配分も上手くできているつもりですが、まだまだ改善の余地は多々あると思っています。
本書で筆者が薦める方法は「アウトプット重視」の勉強法です。つまり、いかに「本番で点を取れる力」を身につけるか、ということです。そのうちいくつかは僕自身が現在やっている方法があり、いくつかはやっていない方法がありました。
まず、僕もやっている方法は、「理論の丸暗記」「読書」「テキストのマーカーでの色分け&付箋の場所の工夫」などでした。
税理士試験で受験生の負担の一つに、理論の暗記がありますが、筆者が薦める最強の暗記法は「音読」です。
(さまざまな暗記法を試す中で最も効果があったのは、、声に出して覚える「音読」です。〜(中略)〜とにかくあらゆる場所で、ポイントとなる理論や条文を、ぶつぶつとつぶやきながら覚えるのです。)
僕も理論暗記が苦手なため、紙に書いたり、黙読したり、音読したり、と色々しまてましたが、今は音読とPCでの打込みに落ち着いています。暗記方法は、書く、読む、聞く等があり、人それぞれ覚えやすい方法があると思いますが、僕としては「書く」方法が一番合っているのですが、手への負担がキツいため、音読(テキストを見ないで)を選んでます。
「読書」は、新聞や小説などなんでも良いので、読書の習慣が、国語力、理解度、解答スピードのアップに繋がるとのことです。確かに税理士試験は問題文の読み取りがキーになることもあるので、時間があれば続けたい習慣です。
また「テキスト」に関してのハックについては、是非本書を読んでみてもらいたいのですが、付箋の貼る場所に意味を持たせて分類する方法、数種類のマーカーによる色分けで覚えやすくする工夫などは、真似してみたいなぁと思いました。
反対に僕がやっていない方法としては、「間違いノートはつくらない」「予習はしない」「苦手な分野は切る」といった方法です。
間違いノートを作成することは、重要だという先生も多いので僕も今年から作っていますが、
間違いノートをつくるのは、時間の無駄ですし、ノートを作成するだけで満足してしまうおそれがあります。絶対にやめましょう。
と筆者は強く反対しています。もちろん、筆者はこれに代わる工夫を問題集を使って行なっているためだと思うので、万人に当てはまるとは思いません。
また、「予習をしない」「苦手な分野は切る」というのは、働きながらで時間がない、初学の科目である、等であればその潔さは吉とでそうですが、僕は今年は受験専念で複数科目受験とはいえ、全て初学ではないため、恐くて苦手分野でも切ることができません。
普段でも本番でも重要な時間の使い方
勉強方法と同様に気になるのが、時間の使いたかではないでしょうか? この勉強時間の使い方には、普段の勉強時間の使い方と試験本番での時間の使い方がありますが、その中でも本書で特徴的だったのが、試験時間の使い方でした。税理士試験は本番120分のテストですが、その120分を筆者は次のように使っていたそうです。
①全体に目を通す時間 5分
②解答する時間 80分
③見直しの時間 25分
④予備の時間 10分
税理士試験は、満点を目指すものではなく、また試験時間中に終わる分量ではないため、その時間の使い方の重要性は分かっているつもりですが、筆者の時間の使い方の特徴的なのは、「見直しの時間」に非常に多くの時間を割いていることです。筆者もこの時間が最も大切な時間だと指摘しています。
具体的には、この見直しの時間に、解き終わった問題を「○」「△」「×」と自己採点し、「×」はきっぱり捨て、「○」はケアレスミスがないか最低2回チェックし、「△」はその問題を集中して考え抜き「○」に変えていく、という作業をするそうです。
一見して迷う問題は即飛ばして後回し、という戦略は定石だと思いますが、この時間配分方法は、その上を行く戦略かもしれませんね。一通り解答する時間が80分となるとかなりの取捨選択技術が必要だと思うので、この方法で上手く解答するためには慣れが必要でしょうが、これからの答練期で何度か試してみようかと思います。
また、普段の勉強時間の使い方としては、「朝」に難しい問題や計算をし、夜に暗記や復習を持ってくる。後は細切れの時間をうまく使う、睡眠はしっかり取るなど、結構他の勉強本でも見かける方法で、僕も結構似た時間の使い方をしているので、今年はこのままの行くことにします。
勉強法については、様々な書籍で様々な方法が提案されているので、情報を得る度に、自分がやってきた方法があっているのか間違っているのか迷いが生じてしまうことがあるかもしれません。これに関しては絶対的な方法があるとは思えないので、あくまで各人が今まで行なってきた方法をベースにして、「この方法は使えるかも!」と思った新しい方法を少しずつ取り入れてみるというスタンスがいいのではないかと思います。
本書には、僕が取り上げたもの以外にも原先生取り組まれてきた勉強方法が多く紹介されていますので、既に税理士試験受験のある方のみならず、これから先、難関資格に挑戦してみようと考えている方にも、是非おすすめしたい書籍です。
オリジナル記事の投稿年月日:2012年5月6日
当記事は管理人が過去に運営していたブログ『」リー:リー:リー』に投稿した記事です。管理人のミスでブログ自体が消滅してしまいましたが、生原稿が残っていたものを若干修正のうえ、再アップさせていただいております。