銀行の評価を落とさないためにも決算書に残すべきでない科目
金融機関に融資を申込む際に決算書類の提出が求められますが、金融機関は提出された決算書の各種数字をもちいて、格付けを行います。
会社側としてもそのことは理解しているので、返済原資があることを示すためにも損益計算書(PL)の営業損益や経常損益が黒字であることを重視する経営者は多いです。
もちろん、黒字であることは大事ですが、決算書上で利益を出すことのみに注力し、その他の数字について対策が疎かになっていると、思わぬところで金融機関からの評価が下げられているかもしれません。
毎月作成されるであろう試算表でも、一年の集大成である決算書でも同じことがいえるのですが、貸借対照表(BS)には金融機関が嫌う勘定科目というものがあります。
もし、自社の期中の試算表を確認して、それらの勘定科目の残高が残っているようであれば、金融機関からの評価が下がらないように、できるだけ決算までに、それらの残高がなくなる、もしくは適正は金額になるように対策をとることが大切です。
もちろん、金融機関に対する対策というだけでなく、自社の経営や資金繰りの観点からも、それらの残高が残っていない、というか、そもそも使わないようにすべきです!
税金、社会保険料の未納
決算書類に提出後に、納税証明書の提出を求められることからもわかるように、金融機関は税金の滞納や納税の猶予を受けていることを嫌います。
税金を滞納や猶予しているような会社であれば、融資した資金の回収リスクが高い、または、その融資したお金が本来の融資目的である、運転資金や設備資金ではなく、税金の支払いに充てるのではないかと疑われ、評価が下がります。
決算書の貸借対照表上で、残ってていい金額は、その決算に係る未払法人税等、未払消費税等、適正な金額だけ残ってていい金額は、納付期限が到来していない源泉所得税、住民税、社会保険料などです。
源泉所得税等の残高の内訳は、決算書類のうち、勘定科目内訳明細書の「仮受金(前受金・預り金)の内訳書、源泉所得税預り金の内訳」を確認すれば分かります。
通常は納付期限の関係で1ヶ月分の残高が残っているのは適正(源泉所得税について納期の特例の適用を受けている場合には、決算期により最大6か月分)ですが、不自然に残高が多いと滞納や猶予を受けている事実はバレますので、資金繰りがキツいとしても、安易に滞納したり、納税の猶予制度を利用するのは避けましょう。
仮払金
決算書の貸借対照表上で「仮払金」が残っている原因としては、主なものは以下の2パターンです。
- 現預金は減っているが、何に使用したか分からないもの(使途不明金)
- 役員や従業員に経費を仮払したが、決算時点で未精算になっている
※その他にも、経理処理方法が不明で一時的に「仮払金」としておくことはありますが、これについては、さすがに決算の段階でそのまま放置するのは考えにくいので省きます。
上記のような原因で、仮払金が残っていたとすると、経理処理、資金管理がずさんな会社であると悪い印象を与えてしまいます。
銀行対策を考慮しなくても、しっかりと経理処理をしていれば普通は「仮払金」は残らないものです。使途不明金として仮払金に残高が残っているのであれば、社長のポケットマネーを投じるなどして、仮払金を一度キレイに消してしまい、以後は「仮払金」を使うことがないよう経理体制を見直しましょう!
貸付金
決算書の貸借対照表上で「貸付金」が残っている原因としては、主なものは以下の2パターンです。
- 自社の社長や役員、知り合いの社長などに貸したはいいが、実質的に回収が困難になっている
- 決算書上、黒字にするために、経費から除外し、社長に対する貸付金に振り替えている
まず、自社の社長や役員に対する貸付は、個人と法人の区別がしっかりしていない会社だと悪印象を与えますし、金融機関から融資を受けた金額が、事業資金でなく、社長や役員に流れてるとみられると、使途違反として、今後の融資を受けることが非常に厳しくなり、最悪、一括弁済を求められる可能性もあります。
決算までにはポケットマネーを使ってでも会社に完済する、完済できないにしても、前期末の残高がそのまま残っている状態は避け、分割でも返済はし、必ず前期よりは残高が減少している状態にしましょう。
あと、経費除外による黒字は、粉飾ですので止めてください。
粉飾の結果、赤字が回避できたとしても、社長個人へ振り替えた貸付金が不良債権であると金融機関に判断されれば、その貸付金については純資産からは除外されてしまうので、結局、融資が受けにくくなるのは同じだからです。
投資(売買目的有価証券、投資有価証券など)
上記の借入金や貸付金と同じような理由ですが、金融機関は、融資したお金が別の用途に使用されることを嫌います。
特に投資は、時価が取得価格を下回り、大きく資金が流出してしまう可能性がありますので、銀行対策を抜きにしても、無暗に投資には手をださない、どうしてもやるのであれば、自己資本の範囲内でやるできです。
ノンバンクからの借入金
ノンバンクから借入していることが、金融機関に発覚してしまうと、銀行等からの通常の借入が難しくなってしまうことです。
これも貸す側の銀行等の立場で考えていただければ理解できると思いますが、ノンバンクを利用しているという事実は、銀行等からは融資が受けられず、資金繰りが苦しいことを自ら体現してしまっているので、その会社は経営状態に問題がありと考えられ、審査に通ることが難しくなります。
「余程の事情がない限り、ノンバンクから融資は絶対になし!」ですが、どうしても利用しなければいけない状況にあるのであれば、決算までには必ず全額返済するようにしてください!