制度上、税金等の猶予は可能ではあるけれど…
税金関連の書籍や記事で、人気を集めやすいのは、なんといっても「節税」関連でしょう。
「自社にとって何の利益にも繋がらない(と思われがち)税金なんて払いたくない!」という考えは、僕自身も会計事務所と会社を経営している身としては、理解できなくはありません。
ただ、事業を行っていく上で、税金や社会保険料等、法律で決められているものは、その納付期限までに支払い続けなければいけません。たとえ、業績が芳しくなく、資金繰りに切迫してきたとしても…、です。
そして、納税資金の管理上、業績が良好なときでさえ、事前の納税の見込額を資金繰り予測表に織り込み、納付できない事態にならないように対策をすることは必須ですが、資金繰りに困窮してくると、事業を継続するために近々に支払わなければいけない原価や人件費の支払を優先して、税金は後回し(滞納)にしてもいいのでは、という考えが頭に浮かんでしまうかもしれません。
確かに、制度上、事業の継続が困難になる恐れがある場合、新型コロナの影響で著しい損失を受けた場合など一定の要件に該当すると、ほとんどの税目で「納税の猶予制度」を利用することにより、最大1年間の猶予、分割による納税が認められることもあります。
資金繰りの観点から、顧問の税理士先生から「納税の猶予制度」のご提案を受けることがあるかもしれません。
しかし、「納税の猶予制度」の利用による税金の猶予や勝手に滞納することは、本当に、ほんと~うに、資金繰り的にどうしようない場合を除いて、するべきではありません。
税金や保険料を滞納するのは危険な訳
もし、税金関係の支払いが厳しい状態だとすると、現状としては、業績は芳しくなく、資金繰り的には自転車操業、金融機関からの融資も受けていて、その返済にも困っている状況だと思われます。
可能であれば、追加で融資を受けて、なんとか資金繰りを持ち直したいと検討もされていることでしょう。
しかし、そこで、もし税金の支払いを猶予・滞納していると、どうなるでしょうか?
金融機関への融資の申込の際には、申告書の提出が必須ですが、申告書の提出と共に(又は提出した後で)、納税証明書の提出を求められることがあります。
納税証明書には、以下の4種類があります。
- その1「納付すべき税額、納付した税額及び未納税額等の証明」
- その2「所得金額の証明」
- その3「未納の税額がないことの証明」
- その4「滞納処分を受けたことがないことの証明」
この4種類のうち、金融機関からは、その3「未納の税額がないことの証明」、場合によってはプラスで、その1「納付すべき税額、納付した税額及び未納税額等の証明」の提出を求められることが多いです。
その3「未納の税額がないことの証明」は、その名の通り、法人であれば法人税、消費税などについて、未納がないことを証明する書類ですので、対象となる税金について滞納があればもちろん、納税猶予の適用を受けていても、その税目については発行してもらうことができません。
金融機関としては、納税証明書により、税金の滞納がないことを確認したいので、納税証明書の提出ができないということは、税金の滞納、又は、納税の猶予を受けていることがバレます。
その結果、税金を滞納しているような会社であれば、回収リスクが高い、また、その融資をした金額が本来の融資目的である、運転資金や設備資金ではなく、税金の支払いに充てるのではないかと疑われ、評価が下がります。
税金を勝手に滞納するのは論外ですが、少しでも資金繰りを楽にしようと、制度上、認められている納税猶予を使った結果、金融機関からの融資が受けれなくなり資金繰りが逆に悪化したら、それこそ本末転倒です。
もし、「納税の猶予制度」を使うのであれば、その結果として生ずるデメリットも事前に考慮しておいてください!