設備投資を手もち資金で一括購入すべきでない理由
設備投資を検討する際には、その資産をどのように契約し導入するか、どのように支払うか、検討されることでしょう。
- 手もちの現金預金で資産を一括購入
- 設備資金の融資を受け、融資資金で資産を一括購入(借入金を分割返済)
- ローンを組んで、資産を購入(代金は分割支払い)
- リース契約を締結し資産を導入、リース期間中はリース料を支払う
パターンとしては、上記のいずれかになりますが、まず、避けた方がいいのは「手もちの現金預金で資金を一括購入」です。
その理由は、たったひとつ。
会社のお金が一気に減少するからです。
車、器具備品、機械、ソフトウェアなどの設備投資は、数百万、数千万、時に億を超える高額なお買物です。
当然、会社の将来的な売上に貢献し、投資資金を回収できる見込みがある上で導入するのだとは思いますが、その資金回収までの期間は長期にわたり、かつ、不確実でもあります。
一括払いで購入すれば、利息の負担がないため、トータルの支払金額はいちばん少なくすみます。しかし、その資金回収が長期、かつ、不確実なものを、手もちの資金で賄おうとするのは、よほど自己資金が潤沢にある場合を除き、資金繰りを悪化させる原因になるため避けるべきです。
「設備資金融資(or ローン)」と「リース契約」それぞれの特徴
では、残りの方法について、それぞれの特徴を見ていきましょう。
なお、「金融機関から設備資金の融資を受ける方法」と「ローンを組んで購入する方法」は取扱いが似ているため、この2つはまとめて、融資(ローン)とリースで比較してみます。
融資(ローン) | リース | |
---|---|---|
資産の所有権 | 会社 | リース会社 |
審査 | あり | あり |
支払い | 分割 | 分割 |
融資枠 | 影響あり | 影響なし |
会計処理(購入時) | 資産計上 | 資産計上※ |
会計処理(償却) | 定率法(定額法) | リース期間定額法※ |
あまり違いがない点
融資(ローン)でもリースでも、それぞれ審査があります。そのため、業績が悪ければ審査に通らない可能性はある点に違いはありません。
また、支払についても、それぞれ分割払いになるので、資金繰りの点でも大きな違いはないでしょう。
ただし、リース料に含まれる利息は、通常、銀行融資による利率より高いため、トータルの支払金額ではリースのほうが多くなるでしょう。
大きな違いがある点
大きな違いがある点は、融資枠の問題です。
会社が融資を受けることができる金額には限度額が決まっています。融資を受ける(ローンを組む)と、当然、その金額分、融資枠が減ります。
一方、リース契約は、借入ではないため、融資枠に影響がありません。そのため、別の用途で資金調達が必要になる可能性がある場合には、融資枠を温存できるリース契約のほうが有利と言えます。
あと、費用化という点でも違いはあります。
いずれの方法で資産を導入した場合にも、導入時には固定資産として資産計上※し、減価償却を通じて費用化していく点は違いはありませんが、融資(ローン)とリースでは、償却方法が異なります。
融資(ローン)により資産を購入した場合には、付属設備など一部を除き、定率法により償却をします。定率法は、購入当初に減価償却費が大きくなる特徴があるため、節税目的で早期に多額の償却費を計上したいという意図があるのであれば、融資(ローン)による購入を検討してもよいかもしれません。
一方、リース(所有権移転外リース)の場合は、リース期間定額法により償却します。リース期間定額法はリース期間にわたって一定額ごと償却していくことになります。