棚卸資産の管理は正しい損益計算・確定申告をするためにも必要
在庫を持つ商売をしている場合、毎月(少なくとも決算時)、所有している在庫の棚卸をします。
これは、会社の在庫管理としても当然ですし、正しい損益計算・確定申告をするためにも必要だからです。
この棚卸資産に該当するものとしては、以下のようなものがあります。
商品や製品、仕掛、原材料などについては、税務会計にあまり馴染みがなくとも、イメージとして棚卸が必要であることはご存じである方が多いため、棚卸資産の計上モレの問題が起こるケースは少ないと思われます(評価方法、評価額については、また別の話ですが)。
棚卸資産からモレやすい「消耗品で貯蔵中のもの」とは?
一方、イメージ的に棚卸資産と言われて「ピン!」とこないかもしれないのが「消耗品で貯蔵中のもの」です。
例えば、事業を始め、自社(自身)の会社や店舗等を知ってもらうためにパンフレットを作成するとします。
このパンフレットは、原則的には「消耗品で貯蔵中のもの」として棚卸資産に該当します。
そのため、毎月(少なくとも決算時)には棚卸を実施して、まだ配布をしていない分は、棚卸資産(勘定科目は「貯蔵品」)として計上する必要があります。
具体例で見てみましょう。
「支払時の経理処理」店舗紹介用のパンフレット(3,000部)の代金30万円を支払った。
借方 | 貸方 | 摘要 |
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貯蔵品 300,000円 | 現金預金 300,000円 | ㈱●●印刷 店舗パンフレット製作・印刷代 |
「棚卸時の経理処理」棚卸をしたところ、パンフレットの在庫は2,000部だった。
借方 | 貸方 | 摘要 |
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広告宣伝費 100,000円 | 貯蔵品 100,000円 | 店舗パンフレット 配布済1000部を振替 |
事業規模にもよりますが、開業当初のパンフレットで何百万も支出することは稀だと思います。
そのため、会計上は金額的に重要性がないものについては、棚卸をしないで、取得時に全額経費に落としてしまっても問題ないでしょう。ただし、税金計算上は、棚卸資産に該当するため、会計と税務の処理を一致させ、棚卸資産として経理処理しておいたほうが無難です。
なお、パンフレットと同様に、棚卸資産として把握すべきものとして、切手や印紙があります。これらについても、少なくとも決算時には棚卸をして、「貯蔵品」として計上モレがないようにご注意ください!
似たような消耗品でも取得時に全額経費として落とせるものもある
上記のように切手や印紙、パンフレットやチラシなどは実際に使用した時点で経費になるのですが、すべての会社の資産(消耗品)について、同様に棚卸をして管理するとなると手間が膨大になってしまいます。
そこで、一定の消耗品(事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産)については、棚卸をしないで、取得時に経費として落とすことが認められています。
例えば、事務用消耗品なら文房具、作業用消耗品なら作業服や手袋・タオルなど、包装材料なら段ボールやガムテープ、広告宣伝用印刷物ならパンフレットやチラシなどが該当するでしょう。
ここで「広告宣伝用印刷物にパンフレットやチラシが該当するなら、それらも棚卸は必要ないのでは?」と思われるかもしれません。
確かにパンフレットやチラシは広告宣伝用印刷物に含まれますが、一定の消耗品は「❶毎期おおむね一定数量を取得するもの」「❷経常的に消費するもの」に限るとされているのです(品目だけで判断すると、決算間際に大量取得してしまえば利益調整が可能になってしまうため)。
そのため、上記の例で言えば、店舗紹介用のパンフレットでも、毎期おおむね一定部数を作成印刷していて(❶)、比較的短期間で全て配布している(❷)のであれば、一定の消耗品に該当するため、取得時に全額経費に落としても大丈夫なケースはあるでしょう!