その固定資産は、会社の売上に貢献してる?「No」なら損切りの検討を!
会計事務所での勤務時代も、独立してからも、新規のお客様を担当させていただく際には、まず固定資産台帳を確認します。
会社の管理体制にもよりますが、固定資産の管理についてあまり気を使っていなかったり、近年だと、管理部門の社員がコロコロ入れ替わるような事情もあってか、実際には使用していない固定資産が台帳に残っていたり、そもそも台帳に記載されている資産が何なのかさえ把握されていない、ということもあるからです。
固定資産とは、売上を生み出すために必要なものであるはずなのに、使用していなければ固定資産という名前でも、会社にとってお荷物です。さらに、使用していないといっても保管する場所は必要になりますし、その保管のためにお金が必要になっているのであれば、それこそ、資産ではなく負債のようなものです。
- せっかく高いお金をだして買ったのにもったいない
- いつかまた使用するかもしれないのに廃棄するのはもったいない
という理由から、使用していなくてもそのままにしている気持ちも分からなくはありませんが、さっさと損切り(処分)してしまったほうが、結果的には会社のためになります。
節税・資金繰り対策としても定期的に不要な固定資産を洗い出し、決算迄に廃棄(売却)すべし
例えば、帳簿価格が100万円の固定資産を廃棄(除却)すれば、100万円経費が増えます。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2022年3月1日 | 減価償却累計額 2,000,000円 | 機械装置 3,000,000円 | 機械装置除却 |
2022年3月1日 | 固定資産除却損 1,000,000円 | 機械装置除却 |
- 経費が増えれば、結果として利益を圧縮でき、税金が減ります(節税対策)
- 税金が減れば、そのぶん会社に残る「お金」が増えます(資金繰り対策)
会社にただ置いているだけで何も生まない固定資産でも、廃棄(除却)すれば、少しは会社の役に立つのです。
ただ、固定資産は、廃棄(除却)処理は、現実に廃棄した事業年度の経費になります。つまり、裏を返せば、廃棄見込みで、実際には廃棄していない場合には認められません。
そのため、税務調査への対策としては、廃棄を依頼した業者から廃棄証明書を発行してもらい、廃棄した事実を客観的に証明できるようにしておくことが大切です!
時間・お金の都合上、決算迄に廃棄できない場合は有姿除却を検討すべし
ただ、固定資産を廃棄するためには時間がかかったり、廃棄のためのお金がかかり資金繰りの都合上、決算までに廃棄が間に合わないといったケースも考えられます。
そのような場合は除却損の計上はできませんが、今後その使用する見込みがないのであれば、有姿除却の要件に該当するかどうか確認してみてください。
有姿除却とは、実際には廃棄処分はしていない(有姿)けど、将来的に使う可能性がない場合には、実際に廃棄した際と同様に取り扱う(除却)ことをいいます。
具体的には法人税法の通達では、以下のように記載されています。
(1)その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産
※法人税法基本通達7-7-2「除却損失等の損金算入(有姿除却)」
(2)特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、当該製品の生産を中止したことにより将来使用される可能性のほとんどないことがその後の状況等からみて明らかなもの
また、この有姿除却は、機械装置や工具器具備品のような有形固定資産だけでなく、ソフトウエアについても認められています。
(1)自社利用のソフトウエア
※法人税法基本通達7-7-2「除却損失等の損金算入(ソフトウエアの除却)」
そのソフトウエアによるデータ処理の対象となる業務が廃止され、当該ソフトウエアを利用しなくなったことが明らかな場合、又はハードウエアやオペレーティングシステムの変更等によって他のソフトウエアを利用することになり、従来のソフトウエアを利用しなくなったことが明らかな場合
(2)販売用のソフトウエア
新製品の出現、バージョンアップ等により、今後、販売を行わないことが社内りん議書、販売流通業者への通知文書等で明らかな場合
ただし有姿除却は、実際にモノは廃棄していないので、実際に廃棄した場合とは異なり、業者から廃棄証明書をもらうこともできません。そのため、除却処理後は、現実に使用していないのかどうか、が問題になる可能性があります。
その対策としては、現実に使用しないことが前提ですが、どういった経緯で有姿除却処理することを決定したのか、について社内の稟議書や役員会の議事録等として残しておくことも大切です!