個人事業者は相手の利便性と自身の手間を考慮し「適格請求書発行事業者公表サイト」へ屋号、通称・旧姓等を公表すべきか?

目次

適格請求書発行事業者の登録申請書だけでは屋号、通称・旧姓等は公表できない

インボイス(適格請求書)を発行するため「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し、登録がされると、登録内容が適格請求書発行事業者公表サイトに公表されます。

法人個人事業者
・法人名
・本店又は主たる事務所の所在地
・登録番号
・登録年月日
・登録取消(失効)年月日
氏名
・登録番号
・登録年月日
・登録取消(失効)年月日

公表サイトに登録される内容は、法人か個人事業者かにより、上記のように異なります。

インボイス制度開始後は、売手は「登録番号」を記載したインボイス(適格請求書)を発行し、買手は受け取ったインボイスに記載された「登録番号」を公表サイトで検索して売手がインボイス登録事業者かどうか確認する、という手順を踏むことになります。
※適格請求書発行事業者からの仕入でなければ消費税の仕入税額控除の適用を受けることができないため、新規の取引先及び一定期間ごとには確認する必要があると思われます。

※国税庁「登録事業者公表サイト(https://www.invoice-kohyo.nta.go.jp/index.html)」より作成

この売手がインボイス登録事業者かどうか確認する過程で問題になり得るのが、売手が個人事業主者の場合です。

個人事業者の場合、同サイトで公表されるのは、基本、氏名、登録番号、登録年月日だけです。

ただ、個人事業者の場合、本名ではなく、店舗・事務所名などの屋号(お店等の名前)、外国籍の方であれば利便性を重視して通称で、ご結婚されている方であれば旧姓でお仕事をされ、普段の発行している請求書等にも、それらを記載している方も多いと思います。

この同サイトに公表される「氏名」は「本名」なので、請求書で屋号や旧姓のみが記載されていると、請求書と検索結果の氏名又は名称が一致しなくて、確認する買手としては困ってしまうかもしれません。

対策としてはインボイスに本名を記載するか、公表申出書を提出するか

売手としても、発行した請求書等の氏名又は名称と公表サイトでの指名又は名称が違うことについて、買手からメールや電話で問合せがくると、それに対応するのは手間がかかります。

国税庁「インボイスQ&A」によると、現状は、インボイスに記載する名称については、請求書に電話番号を記載するなどし、請求書を交付する事業者が特定できる場合、屋号や省略した名称などの記載でも差支えない、とされています。

その手間を事前に回避する方法としては、主に2つの方法が考えられます。

  1. インボイスに普段記載する屋号や通称・旧姓にあわせて、公表サイトに登録されている本名も記載しておく。
  2. 公表事項の公表(変更)申出書」を提出して、公表サイトに屋号や通称・旧姓も表示されるようにしておく。

❶と❷のどちらが良いかは各々の状況によると思いますが、❷の方法により屋号や通称・旧姓を表示するためには、「登録申請書」とは別に、「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」という書類に公表事項を記載して紙で郵送又はe-Taxで提出することにより公表サイトに表示されるようになります。

この申出書の提出によりで追加で公表することができるのは、以下の項目です。

  • 屋号
    ※店舗名が複数ある場合等でも、公表できるのは1つのみです!
  • 事務所等の所在地
    ※店舗の所在が複数ある場合等でも、公表できるのは1ヵ所のみです!
  • 通称/旧姓(旧氏) 
    ※住民票に併記されているものに限ります(住民票の添付が必要)!

なお、この申出書の提出により公表をした内容を変更する場合や公表と取りやめる場合にも、この申出書を使用します。

適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書の提出先と記載例

この「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」は、郵送(提出先は所轄税務署長ではなく、インボイス登録センター)または、e-Taxにより提出できます。

提出のタイミングは、公表事項を新たに追加する又は変更するときなので、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出する際に一緒に提出してしまうか、実際に2023年10月1日にインボイス制度が始まって、屋号、旧姓等を公表しておいた方がいいな、と思ったタイミングで提出しても構いません。

↓「適格請求書発行事業者の登録申請書」の記載方法については、過去記事をご参照ください。

申出書の様式は上記のようになっています。記載については、とくに難しいことはありません。

共通の記載内容として、申出書上部の「申出者」の欄に納税地、氏名等、法人番号(法人のみ)、登録番号(既に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出して登録を受けている場合)を記載します。

あとは、新たに公表する事項を追加する場合には、申出書の中部「新たに公表する事項」に記載されている項目のうち、公表したい項目にチェックを入れ公表する内容を記載するだけです(既に登録した内容を変更する場合には、申出書の下部「変更の内容」欄に記載)。

なお、通称・旧姓(旧氏)氏名の項目には、「氏名に代えて公表」「氏名と併記して公表」のいずれかを選択できますが、国税庁HPの表示例によると、公表サイトにはそれぞれ以下のように表示される、とのことです(ex 本名:国税花子、旧姓:財務花子、通称:税務涼子)。

  •  氏名に代えて公表 ⇒ 本名は公表されず、通称・旧姓のみが表示される
     ex) 通称:税務良子、 旧姓氏名:財務花子
  •  氏名と併記して公表 ⇒ 本名(通称・旧姓)という形式で表示される
     ex) 通称:国税花子(税務良子)、 旧姓氏名:国税花子(財務花子)
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