領収書等を確認しなくても経理処理ができてしまうことによる弊害
クラウド会計の台頭によって「経理処理は簡単!」「簿記の知識は不要!」といったイメージがついてしまった感があります。クラウド会計によって楽になった部分がありますが、簿記の知識が全く不要かというとそんなことはありません。
クラウド会計を利用すれば「日々の経理処理から、申告書の作成まで自分できる」。これは確かに事実でしょう。
しかし「正確な経理処理をして、正しい申告書を作成できる」…か?、と言えば、疑問です。
会計事務所と顧問契約をしていて、会計データの確認をしてもらうと勘定科目は問題ないけど、消費税の取扱いについては結構指摘を受ける、という方もいらっしゃると思います。
極論、納税者が不利である間違いであれば、税務調査で問題にならない(不利を指摘したら税金が減るため)のですが、消費税については納税者有利の間違になっていることが多いです。
そのため指摘を受け修正申告となると、追加で税金を支払うはめになってしまう可能性があるため、細かいと論点だとは分かっていても、会計事務所は指摘します。
クラウド会計がもたらす弊害の一つとして、クレカからAPI連携で取引データを引っ張ってくるので、領収書やレシートを確認しなくても、ポチッと登録ボタンを押せば仕訳が登録されてしまいます。
しかし、それだと正確な経理処理ができないものもあるのです!
消費税がらみで間違えやすい、というか気にもされない取引5選
❶飲食・手土産代など
2019年10月1日から導入された軽減税率により、基本、店内での飲食代は10%、テイクアウトの飲食代は軽減税率対象で8%になっています。コロナ禍で交際費、会議費、福利厚生費などの飲食関連の支出が減少している会社が多いと思いますが、この軽減税率はホント面倒です。
お店で飲食をして、お土産に持ち帰り用に一品包んでもらったような場合には、同じお店での支払いでも10%と8%が分かれていたりするし、お中元・お歳暮等の支払いでも、品物は8%、郵送代は10%になっていたりするので、そのあたりは領収書・レシートで確認しないと正しい仕訳はできません。
❷ゴルフ関連の費用
以前と比べるとゴルフをする社長は減ってきたかもしれませんが、交際費としてのゴルフ関連の支払いも注意が必要です。
ゴルフ場での支払には、プレー代のほかに、ゴルフ場利用税が含まれています。
このゴルフ場利用税、勘定科目はプレー代と同じ「交際費」でいいのですが、消費税の区分は対象外になります。さらに、支払のなかに飲食代が含まれていると、軽減税率8%も絡んでくるので、同じ交際費なのに、仕訳を3つ(10%、8%、対象外)に分ける必要がでてきます。
❸車関連(車検代、軽油代)
車が好きな社長も多いですし、お仕事で車が必要な業種では、車関連の費用が多くでてきますが、車検代も消費税の区分が面倒です。
車検代として、一発で「車両費」なり「修繕費」なりで処理したい気持ちは分かりますが、車検代として支払っている代金には、色々と内容が含まれています。
整備費用は10%、法定費用は対象外、その他、重量税、自賠責保険、任意保険を一緒に支払っていると、「租税公課」「保険料」など勘定科目も分ける必要がるので、必ず、請求書や領収書で内容を確認しましょう。
あと、軽油を使用する車両を利用する会社では、軽油のお支払いについても注意が必要です。軽油のお支払いの内訳を確認するとは、軽油代と軽油税に分かれています。軽油税は消費税の対象外になるので、これもクレカで支払っている場合には、領収書やレシートを確認しないと正しい仕訳が計上できません。
❹香典、ご祝儀などの冠婚葬祭の際のお金
香典、ご祝儀などの名目で、現金をそのまま渡した場合には、消費税区分は対象外です。
これは、ご存じの方が多いのですが、会計ソフトでは「交際費」の消費税区分のデフォルト設定が、課税仕入10%になっているため、なにも気にしないで仕訳を登録していると、消費税区分が10%になってしまっていることが結構あります。
❺電気通信利用役務の提供関連
これは、もう面倒なので、ご説明はまたの機会に(^_^;
「電気通信利用役務の提供」って、呪文みたいで言葉を聞くだけでも難しそうですよね。これについては、結構、経理経験がある方でも間違えますし、あまり経理経験がない方であれば、全く気にもせずスルーしてしまう論点なので、ご説明はまたの機会にさせていただきます。