「医療費控除=10万円」という固定観念が招く弊害

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「医療費控除=10万円」という固定観念

10万円、20万円、65万円、103万円、130万円….

など、税金や社会保険関係について、良くも悪くも、意識される一定の金額のラインがいくつかあります。

上記例で言えば、それぞれの金額は、以下の制度に関するラインです。

20万円 → 給与所得者等で、副業収入がある場合の所得税の確定申告が必要になる所得ライン
65万円 → 事業・不動産所得(事業規模)の青色申告特別控除の限度額
103万円 → 給与所得者の所得税の非課税ライン
130万円 → 親や配偶者の社会保険の扶養から外れるライン

これらの金額のラインを意識するのは悪いことではないのですが、その固定観念が故に間違った選択をしてしまう可能性もあり得ます。

その一つが「10万円」のライン。

「年間の医療費が10万円を超えたら医療費控除が受けられる(税金が返ってくる)」

医療費控除については、普段確定申告をしないような給与所得者(会社員)の方も適用を受ける可能性があるので「10万円」というラインは幅広く世の中に定着しています。

ただ、この「10万円」という言葉に馴染みがあるだけに、医療費を集計してみたら10万円超えていなかったから確定申告しなかった、又はどうせ年間で10万円なんていかないからと端から領収書や通知書を取っておかないなんて方もいらっしゃるかもしれません。

過去の年度分について集計してみたら実は医療費控除を受けられたのに、というのであれば、5年間は還付申告ができます!(税金が返ってくる可能性があります)

年間医療費が10万円超えていなくても医療費控除は受けられるかも

医療費控除の計算式は、以下のようになっています。

(年間医療費 ー 保険金等の補てん分) ー 10万 =医療費控除額(上限200万)

この算式だと10万円が目立つので、自己負担の年間医療費で10万円を超えなければ適用はないと思いがちです。確かに間違ってはいないのですが「」を見逃さないでください。

この10万という金額は「総所得金額等が所得200万円未満の方」の場合、次の金額に置き換わります。

総所得金額等×5%

総所得金額等とは、総合課税の対象となる所得に分離課税の対象となる所得を加算した金額のことですが、会社の給与収入だけであれば、給与収入(年収)から給与所得控除を差し引いた金額のことです。

あくまで所得なので、給与収入(年収)に換算すると約300万円弱となります。

ex)給与収入225万円のみの場合
●給与収入(年収)から給与所得を計算
225万 -(225万×30%+8万)=149.5万 <200万未満
給与収入  -  給与所得控除   =  給与所得

●医療費から控除する金額を計算
1,495,000×5%=74,750

ご自身や家族の病気やケガ、家族の介護などの事情で、年収が低くなった方、自営業の方で近年のコロナ禍の影響であまり利益がでなかった方などは、年間医療費が10万円以下であっても、医療費控除が受けられるかもしれませんので適用忘れのないようにお気をつけください!

セルフメディケーション税制のほうは、意外とハードルが低い

医療費控除には、従来の医療費控除と、もうひとつ医療費控除の特例にあたる「セルフメディケーション税制」というものがあります。この制度は2017年にスタートしていますが、いまいち世間に浸透していない印象があります。

このセルフメディケーション税制も医療費控除の一種なので、算式は一般の医療費控除と一緒です。

(特定一般用医療品等購入費 ー 保険金等の補てん分 ) ー 1.2万円 =医療費控除額(上限8.8万円)

この「特定一般用医療品等購入費」とは、スイッチングOTC医薬品というもので、処方せんがなくても調剤薬局やドラッグストアで購入できるお薬のことで、対象となる商品はレシートにその旨(セルフメディケーション税制対象商品)が示されています

この「セルフメディケーション税制」「従来の医療費控除」は同時に適用することはできず、どちらかを選択する必要がありますが、「セルフメディケーション税制」のほうは1.2万円を超えると適用があるので、意外とハードルが低いです。
会社員の方など忙しくて病院に行く暇がないからドラッグストアでよく薬を購入するという方などは、適用を受けられる可能性があります。

ただし「セルフメディケーション税制」の適用を受けるためには、申告者本人が、健康診断、予防接種など疾病予防のための一定の取り組みを行っていることが条件となっています!

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