中古は新品に比べて早く経費に落とすことができる
ひと昔であれば「中古」といえば、あまり良いイメージがなかったかもしれませんが、今の時代、安いから中古を選ぶという理由のほかに、現行モデルにはない機能が使いたい、形状・色が好みなどの理由から、あえて、旧型モデルを「中古」で購入するというケースもあると思います。
事業用として「中古」の資産を購入した場合も、「新品」で資産を購入した場合と同様に、基本的に10万円以上であれば、基本的に、支払った年度(事業年度)に全額一時に経費にはならず、数年かけて減価償却費という処理を通じ、経費として落としていきます。
しかし「中古」の資産は、新品の資産に比べて、早期に多く経費として落とすことができますので、その処理方法については押さえておかないともったいないことになり得ます。
中古資産を取得した場合の耐用年数の計算方法
新品だろうと中古だろうと、減価償却費は「取得価格×耐用年数による償却率」により計算されます。
例えば、代表的なところで、普通車6年、パソコン4年、サーバー5年などですが、この耐用年数が短ければ短いほど償却率は大きいため、年間(事業年度)でより多くの金額を経費として落とせます。
ただし、中古の資産については、その「耐用年数による償却率」の部分が新品の場合とは異なります。
原則的には「見積法」といって「利用可能年数」を合理的に見積もって耐用年数を決めるとされていますが、そんなことは難しいので、実務的には「簡便法」という数式にあてはめて耐用年数を計算する方法を使います。
具体的な算式は、次のようになっています。
中古資産の耐用年数の計算例【普通自動車を例に】
普通自動車を例に、①経過年数7年の場合、②経過年数:4年3ヶ月の場合に、それぞれ耐用年数がどうなるのか見てみましょう。
普通乗用車の法定耐用年数は6年ですので、①経過年数:7年の場合は、「法定耐用年数を全部経過している場合」に該当します。
7年×20%=1.4年>2年 ∴2年
計算式に当てはめてみると、耐用年数は1年となりますが、2年に満たない場合には「2年」という規定がありますので、結果的に耐用年数は2年となります。
一方、②の経過年数:4年3ヶ月の場合は、「耐用年数をまだ経過していない場合」に該当します。
(72ヵ月-51ヵ月)+51ヵ月×20%=31.2.ヶ月⇒2年7.2ヵ月⇒2年(1年未満切捨)
計算式に当てはめてみると、こちらも耐用年数2年になります。
2年の耐用年数に応じた償却率は、定率法の場合、償却率は「1.00」です。つまり、1年間で取得価格の全額を償却することができます。
ちなみに、よく巷で4年落ちのベンツが最強の節税と言われているのは、4~6年落ちの場合、計算式にあてはめると耐用年数はいずれも2年になるため、4年落ち以上が一番早期に経費に落とすことができ、かつ、将来的に売却する際に、4年落ちのほうが5、6年落ちよりも高値がつく可能性があるからという理屈です。
事業用資産を「中古」で買うなら事前に考慮すべきポイント
ただ、中古資産の購入については、気を付けるポイントもあります。
年度の中途に購入した場合には、償却費は月割りになる
償却率は「1.00」であるため、1年で全額償却できますが、それは、あくまで1年間である場合の償却率です。事業に供した月数に応じて、月数案分をすることになります。
例えば、当期が想定以上に利益がでそうだからと、あわてて決算間際に購入したとしても、事業に供した月数が1ヶ月であれば、1ヶ月分しか経費にならないため、思ってたほどの節税になりません(逆に翌期の業績が悪かったら、翌期は償却費のせいで赤字になるなんてこともあり得ます)。
特別償却・税額控除の対象にならない場合がある(法人の場合)
時々の政策上の措置で、一定規模の設備投資をした場合に、税制優遇措置として「特別償却」や「税額控除」を受けることができる場合があります。
これらの適用対象資産は「新品であること」が要件になっていることが少なくありません。
それらの制度を知らずに「中古のほうが節税になる」という思い込んでいると、結果的に損をする可能性もあります。
節税ありきで「中古」を選ぶのは本末転倒?
「節税になる」と聞くと、確かに魅力的に感じられるかもしれません。
しかし、一括払いであろうと分割払いであろうと、お金の支出を伴う節税は「資産を購入する」か「税務署等に税金を納める」かの違いはあれど、手許からお金がでていくことには違いがありません。
将来的に売上にあげるために必要だから購入する、その結果、節税にもなるしラッキーなら結構ですが、その逆で節税ありきでの資産購入は、あまりおすすめできません。