飲食接待の際にタクシーを利用した場合の経理処理で気を付けるべきこと

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交際費の範囲から除外される飲食費の基準引上げ

2019年から約3年間のコロナ禍からの脱却に伴ない、自粛されてきたお取引先との会食の機会も、以前の水準に戻っている企業が多くなっています。むしろ、「飲食費」の基準が5,000万から1万円以下への引上げられた、2024年度税制改正の影響を受けて、その機会は増えている、という企業もあることでしょう。

飲食費の基準引上げについては、過去記事内でも触れておりますが、大企業にとっては、以下の理由で、影響が大きい改定でした。

  • 「交際費等の範囲から除外される飲食費」が増える(=経費として認められる金額が増える)
  • 経費が増えれば、その分、利益が圧縮されるため、税金が減る

一方、中小企業については、元々、交際費等の枠が年800万円(中小企業の定額控除限度額)あり、この特例も、2027年(令和9年)3月迄延長されたため、その影響は限定的と考えられています。

とはいえ、事業規模や業種によっては、継続的に交際費等が800万円を超えてくるような中小企業もあります。今回は、そのような企業の経営者や経理担当者の皆様に、飲食費に係る経理処理について、留意していただきたい内容をお伝えします!

それは、飲食を伴う接待にあわせて支出することの多い「タクシー代」の取扱いです。

飲食接待に伴うタクシー代は「飲食費」に含めるのか?

そもそも前項で、交際費等飲食費という似た言葉を使っていますが、その2つには、どのような違いがあるのでしょうか? それぞれの定義を見てみましょう。

交際費等の定義】
交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの。

飲食費の定義】
交際費等のうち「飲食その他これに類する行為のために要する費用」(社内飲食費を除く)。
例)飲食代、テーブルチャージ、サービス料など

飲食費の定義に、「交際費等のうち~」とあるように、飲食費は交際費等に含まれるため、基本、損金不算入ですが、一人当たり1万円以下であれば、交際費等の枠から外れ、損金算入できます。一方、一人当たり1万円超であれば、その超過部分だけでなく、全額損金不算入となるため、企業にとっては、結構大事な基準になります!

「1万円基準」が重要であることを認識していただいた時点で、タクシー代の話に戻ります。

取引先との会食前後に、接待相手の送迎のためタクシーを用意し、その料金を自社で負担することはあるでしょう。その際の『タクシー代を「1万円基準」の計算において、含めていいのか?』というのが今回の論点です。

<具体例>
従業員から提出された経費精算書には、ある日の接待に関し、以下の記載と、それに係る領収書が添付されていました。

【経費精算書の記載】
4/15 ●●飯店 飲食代:参加人数2名 21,956円(税込)
【添付されている領収書】
❶店舗へ支払った飲食代 15,356円(税込)
❷相手を送迎した際に支払ったタクシー代 6,600円(税込)

具体例の接待費用について、領収証で詳細を確認せず、経費精算書に記載された金額をもって「1万円基準」を判定した場合、タクシー代を含めた全額が損金算入されてしまいます。

【税抜経理の場合】
13,960(税抜)+6,000(税抜)÷2 = 9,980円 ≦ 10,000円
∴「一人当たり1万円以下の飲食費」に該当し、全額損金算入
【税込経理の場合】
15,356(税込)+6,600(税込)÷2 = 10,978円 > 10,000円
∴「一人当たり1万円以下の飲食費」に該当し、全額損金不算入

しかし、送迎用のタクシー代は、飲食費に該当しないため、正しくは「1万円基準」の計算に含めてはいけません。仮に飲食店が提供する送迎サービスを利用し、その料金を飲食店に支払ったとしても、その代金は同様に「1万円基準」の計算に含めては誤りとなりますので、ご注意ください!

【税抜経理の場合】
13,960(税抜)÷2 = 6,980円 ≦ 10,000円
【税込経理の場合】
15,356(税込)÷2 = 7,678円 > 10,000円
∴「一人当たり1万円以下の飲食費」に該当し、全額損金算入
※タクシー代は交際費等に該当し、全額損金不算入(中小企業の場合、定額控除限度額内であれば、損金算入可)

1万円基準を適用・運用していく際の留意点

なお、「1万円基準」を適用して、1万円飲食費を経費として落すためには、「書類記載と保存」が要件となっています。

内容
記載書類書類(指定の書式はない)
例)領収書に直接記入、経費精算書に記載等
記載事項① 飲食年月日
② 得意先等名、当社との関係、参加者氏名
③ 参加者数
④ 飲食金額、飲食店名、住所
⑤ その他飲食費であることを明らかにする事項
保存義務あり(原則7年)

<保存書類への記載事項②>
(Q14)一定の書類の保存要件としての記載事項として、注意すべき点はどのようなものがありますか。

(A)記載に当たっては、原則として、相手方の名称や氏名のすべてが必要となりますが、相手方の氏名について、その一部が不明の場合や多数参加したような場合には、その参加者が真正である限りにおいて、「○○会社・□□部、△△◇◇(氏名)部長他10名、卸売先」という表示であっても差し支えありません。 また、その保存書類の様式は法定されているものではありませんので、記載事項を欠くものでなければ、適宜の様式で作成して差し支えありません。 なお、一の飲食等の行為を分割して記載すること、相手方を偽って記載すること、参加者の人数を水増しして記載すること等は、事実の隠ぺい又は仮装に当たりますのでご注意ください
国税庁「交際費等(飲食費)に関するQ&A」より引用

国税庁が公表している「交際費等(飲食費)に関するQ&A」においても警告されていますが、飲食費を含む交際費等は税務調査においても調査対象となりやすい項目です。

Q&Aに記載されているような行為は、事実の仮装隠ぺいに該当し、重加算税の対象になり得ますので、「1万円基準」を適用・運用する際には、十分にご注意ください!

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