クラウド会計ソフトは3社(弥生・freee・MF)の寡占状態
㈱MNM総研が、2024年3月末時点でのクラウド会計ソフトの利用状況を調査・公表したプレスリリース「クラウド会計ソフトの利用状況調査(2024年3月末)」の主なトピックは以下となる。
■クラウド会計ソフトの利用率は33.7%、前年比2.7ポイント増と引き続き拡大基調
■インボイス制度の開始を含めた行政手続きのデジタル化がクラウド利用を後押し
■クラウド会計ソフトの事業者別シェアは弥生が53.6%、freeeが24.9%、マネーフォワードが15.2%※
※対象ソフト
・弥生…「やよいの青色申告 オンライン」「やよいの白色申告 オンライン」
・freee…「freee会計(確定申告)」
・マネーフォワード …「マネーフォワード クラウド確定申告」
弊所のお客様は主に法人なので、調査対象とは異なりますが、個人的な肌感覚だと、クラウド会計は「freee」と「マネーフォワード」の2強、インストール型の会計ソフトは「弥生」の1強というイメージでしたが、想像以上に弥生のシェアが高いことに驚きました。
一方で、会計ソフト自体を使用していない個人事業主の方が過半数を占めている、という現状から、これからクラウド会計ソフトの導入を検討している個人事業主の皆様には、どのソフトが最適解か、という観点で、寡占3社が提供しているクラウド会計ソフトの特徴をできるだけ簡単にご説明させていただきます。
やよいの青色申告オンライン
【料金プラン】※税抜
- セルフプラン :10,300円/年(年払い)※「1年間無料」キャンペーン実施中
- ベーシックプラン:17,250円/年(年払い)※「1年間無料」キャンペーン実施中
- トータルプラン :30,000円/年(年払い)※「1年間無料」キャンペーン実施中
使いたい機能への対応状況 | セルフ | ベーシック | トータル |
---|---|---|---|
青色申告決算書・所得税申告書の作成・提出 | ○ | ○ | ○ |
消費税申告書の作成・提出 | ○ | ○ | ○ |
請求書発行の機能があれば使いたい ⇒「MISOCA」で対応可(基本無料+従量課金) | ○ | ○ | ○ |
会計ソフトのサポート対応の有無 | ▲ チャット・メール | ○ チャット・メール・ 電話・画面共有 | ○ チャット・メール・ 電話・画面共有 |
電子帳簿保存への対応 ⇒「スマート証憑管理」という機能で対応可 | ○ | ○ | ○ |
スキャナ保存への対応 ⇒「スマート証憑管理」という機能で対応可 | ○ | ○ | ○ |
■「やよいの青色申告オンライン」の特徴と推し&惜しいポイント!
個人的にはUIが見づらく、銀行口座やクレカとの連携に「スマート取引取込」という機能を一度はさんでから会計ソフトに読み込むのが手間など惜しいポイントはありますが、数年前と比較すると、クラウド会計ソフトとしての使い勝手はかなり良くなってきてる印象です。
また、経理+申告といった基本的な機能に加え、電子帳簿保存・スキャナ保存にも「スマート証憑管理」という機能を無料で使えますし、請求書も月間10枚までであれば無料で作成可能など、前提条件として設定した使いたい機能は全て備えています。
同ソフトには、3つのプランがありますが、機能面で差異はありません。サポートが不要なら「セルフ」、必要なら「ベーシック」、普段の経理や確定申告の業務相談までしたいなら「トータル」を選択することになりますが、弥生には「1年間無料キャンペーン」があるので、無料期間中は「ベーシック」又は「トータル」を選択するのが良いでしょう。
経理&確定申告が初めての場合、必ず操作方法でつまずく場面がでてきます。その際に、電話又は画面共有で対応してくれるのは、結構助かるはずです(弥生のサポートのレベルは高いです)!
freee会計
【料金プラン】※税抜
- スターター :1,780円/月(月払い)、11,760円/年(年払い)
- スタンダード:2,980円/月(月払い)、23,760円/年(年払い)
- プレミアム :39,800円/年(年払いのみ)
使いたい機能への対応状況 | スターター | スタンダード | プレミアム |
---|---|---|---|
青色申告決算書・所得税申告書の作成・提出 | ○ | ○ | ○ |
消費税申告書の作成・提出 | × | ○ | ○ |
請求書発行の機能があれば使いたい | ○ | ○ | ○ |
会計ソフトのサポート対応の有無 | ▲ チャット・メール | ▲ チャット・メール | ○ チャット・メール・電話 |
電子帳簿保存への対応 ⇒「ファイルボックス」という機能で対応可 | ▲ 1月5枚まで | ○ 1月10GBまで | ○ 1月10GBまで |
スキャナ保存への対応 ⇒「ファイルボックス」という機能で対応可 | ▲ 1月5枚まで | ○ 1月10GBまで | ○ 1月10GBまで |
■「freee会計」の特徴・推し&惜しいポイント!
freeeはバックオフィス業務全体の効率化を推進しているため、freee会計だけではく、請求業務、給与計算、社会保険手続きなど、freeeのソフトをパッケージとして導入した場合に一番威力を発揮するソフトだと思います。
会計ソフトとしては、UIが独特で、データ入力についても、基本、複式簿記の仕訳形式で入力する必要がなく、会計知識がない方にとっては、ある程度、使いやすいソフトになっています(決して会計知識が不要という訳ではありません!)。
freeeを使いこなすコツは「設定が命」、そして「コツコツと処理すること」です。AIによる自動仕訳といっても完璧ではなく、AIに学ばせていく過程での設定が誤っていれば、その後の処理も当然間違って処理されてしまうので、都度、設定を追加・削除・修正していくことが肝です(逆に、freeeはデータを修正するのが超絶面倒です!)。
プランとしては、消費税の申告が必要な場合、「スタンダード」か「プレミアム」の2択になりますが、弥生の欄でも触れましたが、1年目は躓くこと多いと想定されるので、電話サポートを受けられる「プレミアム」にして、慣れてきたら「スタンダード」にダウングレードするのが良いと思います。
また、「スタンダード」「プレミアム」であれば、電子帳簿保存・スキャナ保存にも対応可能です(月10GBなら十分でしょう)。
マネーフォワードクラウド確定申告
【料金プラン】※税抜
- パーソナルミニ :1,280円/月(月払い)、10,800円(年払い)
- パーソナル :1,680円/月(月払い)、15,360円(年払い)
- パーソナルプラス:35,760円(年払いのみ)
使いたい機能への対応状況 | パーソナルミニ | パーソナル | パーソナルプラス |
---|---|---|---|
青色申告決算書・所得税申告書の作成・提出 | ○ | ○ | ○ |
消費税申告書の作成・提出 | × | ▲ 2割特例:未対応 | ▲ 2割特例:未対応 |
請求書発行の機能があれば使いたい | ○ | ○ | ○ |
会計ソフトのサポート対応の有無 | ▲ チャット・メール | ▲ チャット・メール | ○ チャット・メール・電話 |
電子帳簿保存への対応 ⇒「クラウドBOX」という機能で対応可 | ▲ 1,000件まで | ○ 無制限 | ○ 無制限 |
スキャナ保存への対応 ⇒「ファイルBOX」という機能で対応可(2024/1~) | ▲ 1,000件まで | ○ 無制限 | ○ 無制限 |
■「マネーフォワードクラウド確定申告」の特徴・推し&惜しいポイント!
マネーフォワードは、UIが従来のインストール型の会計ソフトに似ているため、以前から会計ソフトを使用している方が、あまり使い勝手は変えずに、預金やクレカのデータ連携機能など、クラウド会計ソフトの利点を取り入れたいという要望に答えてくれるソフトです。
なので、今回の「会計ソフトを始めて使う」という想定では、その優位性は活かせません。
また、機能面ではほぼ同じである、freeeのプレミアムが「39,800円」に対して、マネーフォワードのパーソナルプラスが「35,760円」と若干安いので、価格面でマネーフォワードを選ぶのもありですが、マネーフォワードは、消費税申告書の2割特例に対応していないのが致命的です。
その場合、消費税の申告については、国税庁の確定申告コーナーを使用するなどの対応が必要になってしまうため、今回の前提条件では選択肢には入らないかなぁ、というのが正直な感想です。
まとめ
3つのクラウド会計ソフトを価格・機能面で比較してみましたが、いかがでしたでしょうか?
個人的には、「freee」と「マネーフォワードクラウド」は日常的に使用していましたが、弥生会計オンラインは数年前に試した時点ではあまり出来がよくなかったので、今回の記事を書くにあたり、「やよいの青色申告オンライン」を初めて使って1年分データ処理をしてみましたが、比較的ストレスなくできたのが驚きでした(進化していました)。
それで、今回の前提条件で、自分が導入するクラウド会計ソフトですが、結論としては
やよいの青色申告オンライン トータルプラン30,000円(税別)※「1年間無料」
⇒無料期間が終了後はベーシックプラン17,250円(税別)へ切替
を選びます。なんと言っても、無料で1年間使えるのがデカいですね。弥生のシェアが高いのも、ぶっちゃけこの無料キャンペーンが効いてると推測します。あとは、弥生は他の2社と比較するとサポセンの質が高いのも決め手でした(ただ、確定申告時期はどうしても電話が繋がりにくいので要注意!)。
あとは、どれを選んだとしても共通して言えることですが、クラウド会計ソフトを導入しただけで、経理処理が劇的に楽になるわけではありません。クラウド会計ソフトを効率的に使うためのコツは、freee会計の項目で記載させていただいた通り「設定が命」と「コツコツと処理すること」です。お忘れなく!!