過度に節税対策をしないことが、適切な資金繰り対策である訳!

目次

「税金として持っていかれるくらいなら…、」

「節税」といるキーワードは、実に魅惑的な響きがあります。

自社(自分)が苦労して稼いだお金が、特に何の恩恵を受けていない(と感じる)国や地方に多額の税金を納めなければいけないのは納得いかない。税金として持っていかれるくらいなら、自社(自分)のためにお金を使おう。その結果、経費が増えて税金が減るのならいいじゃないか。

そのような考え方自体は理解はできます。

最近はネットでも手軽に節税対策の情報が手に入りますし、会社宛に「節税」というキーワードを前面に押したDMや電話等での営業を受けることもあるでしょう。例えば、

  • 法人保険を使用した節税
  • 設備投資、オペレイティングリースを活用した節税
  • 短期前払費用を活用した節税

などなど。しかし「節税」対策をして、税金を減らした結果、会社の財政状態はよくなりましたか?

節税をすれば税金は減るけど、会社のお金も減る

「節税」対策は、お金の支出を伴う節税と、お金の支出を伴わない節税がありますが、そのほとんどはお金の支出を伴います。お金を使って経費を増やし利益を圧縮する。そうすれば税金は減ります。

上記は、だいぶ単純化していますが、例えば、税引前で800万円の利益でていたとします。中小企業で課税所得が800万であれば、税率は約25%ですので、約200万円の税金が発生します。納税前の現金預金の残高が1,000万円であれば、税金を支払った後の残高は800万円になります。

そこで、社長は考え、利益を減らそうと頑張って(?)経費を300万円積み増します。
すると、税引前の利益は500万に減り、税金は125万円になります。節税対策により、税金は75万円(200万ー125万)も減ったことになります。

しかし、税金をしはらった後に残るお金はどうでしょう?
1,000万円から節税費用の300万円と税金の125万円を差引くと、会社に残るお金は575万円になります。

何も節税対策をしなければ、800万もお金が残ったのに、税金を減らそうとお金を使って節税したばっかりに、会社に残るお金は、節税対策をしなかった場合と比べると、225万円(800万-575万)も減ってしまいます。

実際には、利益に対する課税である法人税等の他に、消費税の納税もあります。節税対策の内容が設備投資等、課税仕入れに該当するものであれば、消費税の負担は減るので、上記のように単純な比較にはなりませんが、いずれにしても、何も節税対策をしなかったほうが、会社にお金が残るのは間違いありません。

実は余計な節税対策をしないことが、最適な対策!?

もちろん、適切な節税対策はやるべきです。

元々、翌期に実施する予定だった設備投資であれば、少し前倒しをして決算前に実施するのは構わないでしょう。その他にも、従業員を雇用しているのであれば、決算賞与の支給は、お金の支出は伴っても、従業員のモチベーションアップや雇用維持に繋がる可能性まり、加えて税額控除(所得拡大税制)の適用もあれば、結果的には会社にとって意味のある支出といえるでしょう。

しかし「節税」というのは、結局、定められた法律の範囲内でやるものなので、「節税」という言葉に、何か魔法のような響きがあったとしても、別に裏技的なものは存在しません。

節税ありきで、「じゃあ、税金を減らすために何をしよう?」という考え方で対策をすると、会社のお金は余計に減り、利益が減ることにより財務諸表(BS、PL)の数値が悪くなるため、銀行融資を検討されている場合、審査に影響する可能性があるなど、得てして会社にとって良い結果は生まれません。

なので、会社にお金が残るような対策はしっかりやった上で、それでも利益が残るのであれば、そこは余計なお金は使わず、割り切って税金を支払うことが、会社の資金繰りの観点からすると、最適な対策と言えるでしょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次