フリーランス(個人事業主)のお財布は「ひとつ」
フリーランス(個人事業主)の方は、事業用のお金を引き出し生活費として使っても特に問題はありません。
事業用のお金と生活用のお金を分類していたとしても、フリーランス(個人事業主)の場合、それらは一体として見られます。結果、事業とプライベート間で貸した借りたといった問題は生じませんので、当然、後で事業用の口座へお金を戻す必要もありません。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2021年2月15日 | 事業主貸 200,000円 | 普通預金 200,000円 | 現金引出 |
2021年7月1日 | 事業主貸 30,000円 | 未払金(クレカ) 30,000円 | 高島屋 お中元 |
ただし、事業用の口座からお金が出て行った、事業用のクレカで私物を購入した、というお金の動きは記録に残こす必要があるため「事業主貸」という個人事業主独自の勘定科目を使用して、損益計算に影響しないように処理します。
また、将来的に借入を考えている方、法人成りを考えている方などは、必要な時に必要なお金をちょこちょこ動かすのではなくて、給与のように決まった日に決まった金額を生活用の口座に振り込んでプライベートの支払いはそこからするようにするのがオススメです。
公私の区別をつける練習にもなりますし、経理処理もシンプルで楽になります!
法人のお財布と社長のお財布は全く「別モノ」
一方、法人の社長が会社の事業資金を引出て生活費として使ったり、事業資金で個人的な買物をしたらどうでしょうか?
ひとり社長、ひとりでなくても同族会社の社長は「会社のものは俺のもの」的なジャイアン思考を持ちがちですが、法人と社長のお財布は別モノです。
そのため、社長といえども、本来は、取締役会の決議や契約書もなく、他人(法人)のお金を自由に使ってはいけないのですが、
- プライベートな費用は経費で落とせないため、仕方なく…
- 赤字回避のため、一部の経費として落とさず、社長が肩代わりしている…
- 公私混同して会社のお金を引き出したものが、いつのまにか累積している…
などの理由で会社からお金が出て行っている場合には、社長に対する「貸付金(短期貸付金、役員貸付金)」として処理します。
※ほんの一時的なもので、すぐ清算されるのであれば「仮払金・立替金」として処理してもかまいません。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2021年4月1日 | 短期貸付金 200,000円 | 普通預金 200,000円 | 社長 役員貸付 |
社長側から見れば、法人からお金を借りていることになるので、当然、会社に返済する必要があります。
社長が会社からお金を借りている場合に気を付けるべきポイント
社長に対する「貸付金(短期貸付金、役員貸付金)」については、気を付けるべきポイントがあります。
貸付金に対しては利息を計上する必要あり
法人は利益をあげるために存在していますので、無利子又は低利でお金を貸すことはないと考えられています。そのため、相手が社長であっても「貸付金」である以上、しっかり利息をとる必要があります。
利率の設定については、以下の2パターンがあります。
- 特定の借入金と紐づいている場合 → その借入金の利率
- それ以外の場合 → 特例基準割合による利率※
※平成30年~令和2年中→1.6%、令和3年中→1.0%
無利息の場合又は低利で貸し付けた場合には、一定の場合を除き、上記の利率と実際の利息との差額が給与(役員報酬又は役員賞与)とみなされる可能性がありますので、ご注意ください!
金融機関に対する印象が悪い
そもそも、社長に対するものに限らず、決算書に「貸付金」が載っているのは、金融機関からの印象がが良くありません。
金融機関からしたら「運転資金や設備投資を目的として貸したお金が、社長個人に流れているのではないか?」と考えられてもおかしくないからです。
例え現状は銀行借入がないとしても、将来的に借入をする可能性はどんな会社にもあり得ますので、決算書に「貸付金」が残らないように、早め早めに対策をしておくことが大切です。
社長の個人資産で返済できるのであれば、個人資産で返済するのが一番ですが、もし、個人資産がなく返済が厳しいのであれば、社会保険料や所得税等の税金が勿体ないところではありますが、役員報酬を増額して、その一部を貸付金の返済に充てるなどの方法があります。