経営の意思決定に活かせる月次試算表を作るに押さえておくべきポイントとは?

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自社の数字を確認するのが、決算書だけだとしたら危険です

会社を経営していて、いちばん気になるのは決算でしょう。
決算の損益により税金が確定しますし(ゆえに過度に節税を求める経営者も…)、融資の際に金融機関に提出する書類のなかでも決算書類が一番重視される(ゆえに粉飾に手を出してしまう経営者も…)ので、確かに決算は大事ではあります。

しかし、自社の数字を確認するのが、決算の年一回だけだとしたら、それは危険です。

「毎月の試算表は作成していないけど、頭の中ではざっくり損益計算ができているから大丈夫!」という反論があるかもしれませんが、どんぶり経営で、長い間うまく経営を続けれるのは非常にまれなケースです。

なぜなら、ほとんどの会社の経営者は、ご自身の会社に関する業務に関してはプロですが、その経営者になる過程で、税務会計に関する知識を学ぶ機会がほぼないからです。それなのに、自社の数字を確認するのが決算時の年一回しかないようでは、10年会社を経営していたとしても10回、それでは少なすぎます。

もちろん、税理士としては、そこを分かりやすいように経営者に説明するのが腕の見せ所かもしれませんが、そもそも数字に興味のない方、学ぼうとしない方には、どんな説明の仕方をしたとしても、なかなか響きません。

やはり、最低でも毎月、試算表を作成し、毎月、チェックすることが必要です。これは何も会計データに限った話ではありません。ご自身の仕事でも、同じ資料を毎月チェックしていると、それにより「気づき」があったりアイデアが浮かんだりすると思います。それと同じで、何回も試算表を確認することを通じて、数字の見方や経営判断への活かし方が分かるようになってきます。

会計事務所勤務時代から、様々な会社を担当させていただいてきましたが、残念ながら、皆様が想像されるより(?)、現実には、月次試算表を作成している会社は少ないのも事実です。

一方、毎月、ただ単に試算表を作っているだけでは不十分もあります。その月次試算表が経営判断に活かせるものになっていなければいけません、そのためのポイントは、以下の2点です。

  • 早く!
    毎月、遅くても翌月一週間以内には完成させること。
  • 正確に
    残高を1円単位で合わすといった正確さ不要ですが、中小企業の会計基準に沿った会計処理をする

スピードを重視しつつ、経営の意思決定に使える試算表を作るためのポイント

「早く!」については、改めて述べる必要もないでしょう。
試算表を毎月作成していたとしても、それが翌月の末日頃に完成するようでは、経営判断に活かす資料としては遅すぎます。現状、翌月一週間以内に試算表が完成できないようであれば、まずは、経理業務の体制を見直してみることが第一です。

「正確に!」については、前述の通りですが、月次試算表については完成させるスピードが大切なので、1円単位でガチガチに固めることまでは必要ないと思います。
経営判断に活かすという観点でいえば、中小企業の会計基準に沿った経理処理をすることが大切です。

中小企業の会計基準とは、税理士会、公認会計士協会などの中小企業に関係する団体が、中小企業の実態にあった会計処理のあり方を指針として取りまとめたもので「中小企業の会計に関する指針」と「中小企業の会計に関する基本要領」の2つが公表されています。

とはいえ「いきなり『中小企業の会計基準』と言われても何よ?」となってしまうと思うので、まずは、以下の点に気を付けて経理処理をしてみることをオススメします!

発生主義(実現主義)で経理処理をする

決算書だけ正しく処理することだけ考えれば、期中の処理は、現金預金の入出金時に売上、原価、経費を計上し、決算の時だけ、発生(実現)主義で処理をすれば正しく税金計算はできます。しかし、この方法では実際の損益とタイミングにズレが生じてしまうので、正しい経営判断のために資料としては不十分です。

最低でも売上と原価は、毎月、実現(発生)主義で計上し、可能な限り実地棚卸も行います。
毎月の実地棚卸が厳しい場合には、最低限、見込の利益率(原価率)から算出した帳簿上の棚卸を試算表に反映させるようにしましょう。

経費(販管費)については金額的に影響が少ないものについては、現金主義でも構わないと思いますが、人件費や自社にとって損益への影響が大きい経費(例えば、広告宣伝費、車両費、支払手数料など)については、概算でも発生主義で経理処理をするとよいでしょう。

減価償却費は月割りで計上する

固定資産が多い会社については、減価償却費が損益に与える影響は大きいです。たまに決算整理仕訳でまとめて一年分の減価償却費を計上している会社も見かけますが、月次で減価償却費を計上するようにしましょう。

ほぼ、どの会計ソフトにも固定資産を管理する機能があり、資産の取得価格、取得日、償却方法などを登録しておけば、減価償却費を月割りで自動計算し、仕訳を作ってくれます。

経過勘定項目(前払金・前払費用、前受金・前受収益)も月割りで計上する

一括受取、一括支払のものを、その入出金時の売上や経費としてしまうと、月次試算表で確認する際に、損益がボコボコになってしまいます。

月次損益への影響が大きい場合には、短期前払費用の特例の適用を受ける場合を除き、減価償却費と同じように、月割りで振替るようにしましょう。

(税込経理の場合)概算でもいいので毎月、消費税を経費処理する

これは、消費税の課税事業者で税込経理をしている場合に限りますが、税込経理の場合、原則、決算時に確定した消費税額を「租税公課/未払消費税等 ●●円」として一括で費用処理します。

しかし、それでは、決算時に損益が大きく変動してしまうので、経営判断を見誤る可能性があるため危険です。特別な理由がなければ、消費是が損益に影響しない税抜経理に変更すべきですが、それがむずかしのであれば、概算でもいいので毎月、消費税を計上するようにしましょう。

消費税申告書を作成できる会計ソフトであれば、月次の数字を固めた時点で、仮で申告書を作成すれば、その時点での消費税額が分かるので、その税額(前月までに計上済の金額は加減算する)を計上すればOKです!

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