借入金の返済期間は「可能な限り長いほうがいい?」
一般的に、借入金の返済期間は長いほうがよい、と考えられている節があります。
過去に自社が手形の「貸しはがし」が受けた、自社ではなくても知り合いの会社が「貸しはがし」を受け経営危機や倒産に陥った姿を見てきたような社長にとっては、特に「借入金の返済期間は、可能な限り長期がいい!」と考えられるのも不思議ではありません。
確かに、返済期間は長期の方が、融資期間中の「貸しはがし」を心配することはないですし、一回ごとの返済金額も抑えることができます。また、資金繰りの観点でも、一時的に多額のキャッシュアウトが生じる可能性がないため安心、と言えないこともありません。
ただ、それは正しいのでしょうか?。
現金商売である一部の業種を除き、事業を継続させていくためには、売上代金が入金されるまでの間、事業をつなぐための運転資金が常に必要になります。
正常運転資金=売掛金+棚卸資産ー買掛金
正常運転資金は、決算書の数字を使うと機械的に計算できます。そして、この運転資金は、できれば返済する必要のない自己資金で賄える状態を目指すべきです。ただ、そうも言ってられない状態の中小企業は多く存在します。
その場合、金融機関から融資を受け資金を調達するしかありません。
しかし、その借入金が多額になると、毎月の返済により運転資金が食いつぶし、不足する運転資金を確保するために、更なる借入が必要になる、という悪循環に陥りかねません。
短期継続融資は実質的には「超・長期借入金」
そこで、検討していただきたいのが、短期借入金(手形貸付)の活用です。
短期借入金(手形貸付)は、運転資金、賞与資金、納税資金など短期間に必要な資金を、1年以内の短期間、返済方法は、1月・3月毎、又は期限一括返済する借入金です。
1年で一括と聞くと「そんなに短期間で借りた金額を返済できるのか?」と不安になるかもしれません。
ただ、運転資金を長期借入金から、この短期借入金(手形貸付)にすることにより、返済期日までは元本の返済が不要になることのインパクトはでかいです。
さらに、会社の状況に特に問題がなければ、手形書き換えすることにより、返済期日の延長が可能(たいてい、金融機関のほうから、打診が受けます)です。
つまり、会社から出ていくお金は利息だけ、元本部分は借りっぱなしです。この手法は、短期継続融資(又は「短コロ」)と呼ばれています。
名称は短期ですが、実質的には、超・長期借入金、しかも、元本の返済がないため、究極の長期借入金、といえます。
短期継続融資の活用を、会社の財務改善・成長投資へ繋げる!
一時は金融庁の指導により、短期継続融資が証書貸付による長期融資に移行していった経緯があるので、もしかしたら、金融機関に対して短期継続融資の提案をすることを躊躇してしまうかもしれません。
ただ、金融機関側からすれば、元本は返済されても利益にはなりませんが、短期継続融資でも長期融資でも、売上となる利息は受け取れますし、短期融資のほうが、貸倒リスクも低くなりますので、特にデメリットはありません。
さらに、金融庁のほうでも2015年に以下の報道発表をし、「金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編]」に新たな事例(事例20)を追加した趣旨を示しています。
1.正常運転資金に対して、「短期継続融資」で対応することは何ら問題ない。
2.「短期継続融資」は、無担保、無保証の短期融資で債務者の資金ニーズに応需し、書替え時には、債務者の業況や実態を適切に把握してその継続の是非を判断するため、金融機関が目利き力を発揮するための融資の一手法となり得る。
3.正常運転資金は一般的に、卸・小売業、製造業の場合、「売上債権+棚卸資産-仕入債務」とされているが、業種や事業によって様々であり、また、ある一時点のバランスシートの状況だけでなく、期中に発生した資金需要等のフロー面や事業の状況を考慮することも重要である。
平成27年1月20日 金融庁
つまり、金融庁も短期継続融資の活用を奨励していますので、試算表や資金繰り表など各種資料を作成し、状況をしっかり説明できれば、今後はさらに、短期継続融資に応じてくれる金融機関は増えてくることでしょう。
会社側としては、正常運転資金を確保しつつ、会社の財務状態を改善するチャンスになりますし、それまでは元本返済に回していたお金を、会社の成長のための設備投資に回せるチャンスにもなり得ますので、正常運転資金については、長期融資でなく、短期継続融資を活用することを、是非ご検討ください!