法人の決算日をいつにするか検討する際に考慮すべきポイント

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設立1期目も12ヵ月にすると、消費税の免税期間を最大限活かせるが…

法人設立、個人事業主からの法人成りを検討する際に、意外と悩む可能性があるのが、決算日(事業年度)をどうするか、ということ。
フリーランス(個人事業主)の場合は、ご存じの通り、12月以外に選択肢がありませんが、法人は任意の月を選択できるだけに、逆に悩んでしまうかもしれません。

一般的に「決算=3月」というイメージが根強く残っていますが、ぶっちゃけ関係ありません。
せっかく自由に選択できるのですから、少しでも自社にとってメリットがある月を決算月として選びましょう。

まず、メリットとして考慮すべきことは「消費税の納税義務」です。

法人の場合、基本的に以下の❶と❷の場合を除き、設立1期目、2期目は納税義務がありません

  1. 資本金が1,000万円以上の場合
  2. 資本金が5億円以上の親会社の子会社の場合

消費税の納税義務は、基準期間(2事業年度前)の課税売上が1,000万円を超えた場合に、納税義務が生じます。ということは、設立1期目、2期目は、基準期間が存在しないため、基本的に消費税の免税事業者となります。

当然、この免除期間はできるだけ長いほうが会社にとってはメリットがあるので、設立事業年度が最も長くなるように決算月するのがいちばんのお得です。つまり、設立日の12か月後を決算月にするといちばんそのメリットを受けることができます。

2023年(令和5年)10月1日からインボイス制度の開始することにより、今後は、売上が1000万円以下の免税事業者であっても、インボイス(適格請求書)を発行するため、あえて課税事業者を選択するという事態が生じることが想定されます。
そのため、今後は、法人設立をご検討されている方で、インボイス制度の開始にあわせて課税事業者を選択する予定がある場合は、設立1期目を12ヵ月に設定しても、丸々2事業年度の間、免税事業者のメリットを活かすことができません。
それならいっそ、同じ事業年度中に免税・課税の期間が混在すると面倒だから、決算月を9月にする、というのもありだと思います。

第一四半期に繁忙期がくるようにすると、節税・納税資金の対策に時間がかけられる

次に「節税・納税資金の対策」という観点で考えると、1年の間で繁忙期がある業種の場合には、事業年度開始月付近に繁忙期が来るように設定すると便利です。というのも、繁忙期が決算間際の月にあると損益の着地点が予測しずく、節税・納税資金の対策を取りにくいためです。

仮に、繁忙期が事業年度の最初の方にあれば、決算日まで時間をかけて節税対策をすることができますし、役員報酬の改定も事業年度開始から3ヶ月以内であるため、その繁忙期の利益を加味した上で当初の損益の着地予測を修正して、改定額を決定する、ということもできます。

決算日の問題ではありませんが、法人の設立日は「1日」を避けると、少しだけ税金が安くなります。法人税の均等割は、1月未満は切捨てになるので、2日以降に設立すれば、法人住民税(均等割)が月割計算になるため、ほんの少しだけ税金が安くなります(まぁ、これは誤差の範囲内なので、そんなに気にしなくても….)。

設立1期目も12ヵ月だと、業績比較(前期比較)がしやすい

会社の業績を分析するために、前期比較は欠かせません。

その観点から比較すると、設立1期目と2期目を比較するためには、どちらも12ヵ月となっていたほうが、比較はしやすいです。その観点から考えると、設立1期目も12ヵ月に設定したほうがいいかもしれません。

当初設定した決算日では都合が悪くなったら、決算日の変更を検討する

以上のことを考慮すると、売上に季節的な変動がなければ、設立1期目が12ヵ月になるように決算日を設定しておくのが無難、かつ、お得です。

ただ、実際に会社が動きはじめるてみると、想定していた以上に、特定の月に売上が集中するなどの事態が生じるかもしれません。そのような事態になったら、そのときに決算期の変更を検討してみればよいでしょう。

決算日の変更というと大事で面倒だと思われるかもしれません。ただ、実際の手続きは簡単でコストもほぼかかりません。具体的に必要なことは、下記の2つだけです。

  • (事業年度が定められている)定款を変更するため、株主総会を開き、議事録を作成する。
  • 税務関係の届出書を、税務署(異動届出書)、都税事務所(異動届)、市役所(事業所等変更届)へ提出する。

ただし、決算期を何回もコロコロ変更するのは、租税回避の疑いを掛けられるだけでなく、前項の前期比較の点でも変則決算を挟むと比較がしにくくなりますので、その点はご注意ください。

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