相続した場合など、取得費が分からないケースもあり得る
近年は株式等の取引はネット取引が主流で、過去の取引履歴については、証券会社のマイページでいつでも確認できます。
しかし、ひと昔前は、一般口座で取引することにメリットもあったため、当時の名残で過去に購入した株がそのままになっていたというケース、親が株式投資をしていて、その株式を相続したというケースでは、その株式をいざ、いざ売却しようとしたときに取得価格が分からず困ってしまいます。
※相続税の申告書に記載されている株価は、相続税評価額であり、取得価格ではありません!
「この株、いったいいくらで買ったんだ?」
ご存じの通り、株式の譲渡した場合には、譲渡損益を計算し、利益がでていれば確定申告をして税金をおさめなければいけません。逆に損失が生じていたら、確定申告をすることで、その損失を翌年以降に繰り越すこともできます。
株式の譲渡損益計算は上記の算式で計算するため、取得費(取得価格)がわからないと、そもそも損益の計算ができないのです! ※特定投資株式の控除額は特殊な場合にのみ控除するので、気にしないでください!
取得費が分からないときは概算取得費が使えるが…
そうは言っても、証拠になるものがないし、確定申告期限も迫ってきたし困ったという場合には、「概算取得費」を使えばとりあえず譲渡利益(絶対に損にはなりません)を計算することはできます。
概算取得費とは、その名の通り「取得費を概算で計算する」ということ。上記の算式の「収入金額×5%」の部分のことです。つまり、収入金額だけで、譲渡利益を計算することが認められます。
「認められます」と国税庁のパンフには恩着せがましく書かれていますが、売却代金の5%で計算したら売却代金の95%も税金の対象になってしまいます。
例えば、売却代金が100万だったら、95万円が税金の対象になり、所得税が約14.5万、住民税が4.75万円と、20万円近くも税金として持っていかれてしまいます(鬼め!)。
取得価格が分からない場合の対処方法
ただ、国もそこまで鬼ではありません。
株の取得価格が分からない事態が生じた際の、取得価格の確認方法を示してくれています。
このフローチャートに従って、どこかに引っかかれば、その金額を取得価格とすることができます。
金融商品取引会社等から年1回送付される年間の取引履歴をまとめた年間取引報告書や、取引があった月毎に送付される取引残高報告書が手許に残っている場合には、それらの報告書で確認します。
「そりゃ、そうだ!」という感じ。これがあれば、そもそも悩みはしません!
証券会社は、顧客総勘定元帳というデータを10年間保存しておく義務があります。
つまり、10年以内に購入したものであれば、証券会社に問い合わせることにより、取得時期、取得価格及び取得株数が判明するでしょう。
この方法が一番確実なので、まずは証券会社にお問い合わせいただくのが一番です!
↑上記のSBI証券に限らず、どの証券会社でも請求できます!
証券会社によっては10年以上前の取引履歴でもデータが残っている可能性があるかもしれませんが、❷の方法で確認できない場合は、本人が残した日記帳(メモ書き)や預金通帳が残っていれば、それらが使えます(なんと粋な計らい!)。
日記帳や預金通帳で取得価格自体が判明する場合は、その金額を使い、取得時期のみが確認できる場合は、その取得時期を元に取得価額を算定しても差し支えありません、とされています。
もちろん、嘘はいけませんが、メモ書きでもなんでも取得時期だけでも分かれば、yahooファイナンス等で、その時期の株価(終値)を調べることができます。
その株式の発行会社が名義書換業務を委託している証券代行会社に株式異動証明書の発行を請求し、その証明書に記載された名義書換日を基に、❸と同じように、yahooファイナンス等で、その時期の株価(終値)を調べる。
三井住友信託銀行のHPにも「株式の保有期間が長い場合など、調査に時間を要する」と記載されているように、請求から発行までは時間をかかりますので、その点はご注意ください!