社宅家賃の経理でやってしまいがちなミスとその防止対策

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節税対策として有効な借上社宅制度

社宅制度は、会社が所有する物件、又は、会社が他の貸主と契約した物件を、自社の役員又は従業員の自宅用として貸し出す制度のことです。

利用する役員・従業員の立場としては、近隣相場より安い賃料で住めるため、福利厚生として満足度は高く、会社の立場としても、役員・従業員の満足度を上げつつ、税金を減らす(=節税)ことに繋がるため、有効な節税対策のひとつと言えます。

過去に投稿した「社宅」関連の記事では、導入・運用の際の家賃の設定等に関して、気を付けるべきポイントについて記載させていただきましたが、今回は、社宅制度に係る経理処理について気を付けるべきポイントについて、ご紹介させていただきます!

思わぬ遅し穴がある借上社宅に係る経理処理

社宅制度を運用する場合、前項の図の通り、役員報酬・給与支払い時に控除するか、役員・従業員から別途振込んでもらう方法により「賃貸料相当額」を徴収しますが、この「賃貸料相当額」の経理処理の方法がポイントです。

せっかく節税対策をしているのに、経理処理ミスが原因で、後々、追徴税額を支払う羽目になったら元も子もないので、ご注意ください!

❶貸主への賃料支払時

  日付   借方   貸方     摘要
2025年3月31日地代家賃 200,000円現金預金  200,000円●●不動産 4月分家賃支払

❷役員・従業員から賃料受取時

  日付   借方   貸方     摘要
2025年4月20日現金預金 40,000円雑収入(地代家賃)  40,000円従業員 4月分家賃受取

上記❶及び❷の仕訳自体を間違うことは、あまりないでしょう。

❷を、収入(雑収入)とするか、費用の相殺(地代家賃のマイナス)とするかについては、全体の損益が変わる訳ではないので、損益計算においては、たいした問題は生じません。
一般的には「雑収入」として処理することが多いですが、会計監査等の関係や、営業利益の数字は良くみせるため、といった理由で「地代家賃」のマイナスとして処理することもあります。

問題は「消費税」の処理です。消費税区分を表示させるので、改めて仕訳をご確認ください!

❶貸主への賃料支払時

  日付   借方   貸方     摘要
2025年3月31日地代家賃 200,000円
(消費税区分:非課税仕入
現金預金  200,000円●●不動産 4月分家賃支払

❷役員・従業員から賃料受取時

  日付   借方   貸方     摘要
2025年4月20日現金預金 40,000円雑収入(地代家賃)  40,000円
(消費税区分:非課税売上
従業員 4月分家賃受取

❶の際に支払う「地代家賃」の消費税区分は非課税仕入であるのに対して、❷の際に受取る「雑収入(又は地代家賃)」の消費税区分は、正しくは非課税売上となります。

【参考条文】
住宅の貸付けに係る家賃の消費税は、非課税とされている(消法別表第2十三)。
賃借人自らが住宅を利用せず、第三者に転貸する場合でも、住宅として転貸することが契約書等で明らかな場合には、賃借人が転借人から受け取る家賃も非課税となる( 消基通6-13-7 )。

経理処理ミスによる影響とミス防止対策

実際、国税庁HPにて公表されている「申告書確認表」(チェックリスト)」に、この「❷役員・従業員から賃料受取時」の消費税の課税区分についての記載があることからも、この経理処理について、過去にミスが一定頻度で発生していることが伺えます。

「申告書確認表」の留意事項もに記載されていますが、非課税仕入と非課税売上を間違えてしまうと、場合によっては、消費税の仕入税額控除に影響を与え、結果として納税額が変わる可能性があります。

今回は、消費税計算の詳細については割愛させていただきますが、要は、非課税売上とすべきものを、非課税仕入として処理していると、本来、正しい処理をした場合と比較して、消費税の納税額が少なくなる場合があるため、税務調査による更正や修正申告により、追徴税額を課される蓋然性があるわけです。

ただ、このような単純な経理処理のミスは、以下のような対策で、容易に防ぐことができます。

  • 仕訳辞書の機能を使う
  • 補助科目の機能を使う

仕訳辞書の機能を使う

仕訳辞書は、定形の仕訳を設定しておき、データ入力時に、その設定した仕訳を読み込んで適用する機能です。
この仕訳辞書の機能で、「❷役員・従業員から賃料受取時」の仕訳を作成し、雑収入(地代家賃のマイナス)の消費税区分を非課税売上にしておけば、データ入力時のミスを無くすことができます。

会計ソフト設定箇所
弥生会計設定→取引辞書→仕訳辞書→新規作成
freee入力効率化→取引テンプレート(振替伝票テンプレート)→新規作成
マネーフォワードクラウド会計各種設定→仕訳辞書→新規作成

補助科目の機能を使う

どの会計ソフトでも、各勘定科目ごとに、消費税区分がデフォルトで設定されています(例えば「地代家賃」は課税仕入10%、「雑収入」は課税売上10%など)。
この勘定科目自体の消費税区分を変更すると都合が悪いこともあるので、「社宅個人負担分」のような名前で補助科目を作成し、その消費税区分を「非課税売上」に設定しておきます。そして、データ入力時に、補助科目を「社宅個人負担分」にすれば、消費税区分は自動で「非課税売上」になるため、ミスを無くすことができます。

会計ソフト設定箇所
弥生会計設定→科目設定→補助作成
freeeマスタ・口座→勘定科目の編集 ※品名に個別に税区分を設定
マネーフォワードクラウド会計各種設定→勘定科目→補助科目追加

どちらも、簡単な設定をするだけで、ミスを防げますので、一度、ご利用している会計ソフトの設定を確認してみてください!

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