借入社宅が節税対策として使用される訳とは?
「節税」というキーワードで検索すると、必ずヒットする対策のひとつに「社宅」があります。
「社宅」という言葉には、どこか時代遅れで古臭いイメージがしますが、節税対策としては、昔から現在に至るまで、現役バリバリで使われ続ける節税界の優等生的な存在です!
「社宅」は、会社が所有する物件、又は、会社が他の貸主と契約した物件を、自社の役員又は従業員の自宅用として貸し出す制度のことです。利用する役員・従業員の立場としては、近隣相場より安い賃料で住めるため、福利厚生として満足度は高いですし、会社の立場としても、役員・従業員の満足度を上げつつ、税金を減らす(=節税)ことに繋がるため、満足度の高い節税対策と言えます。
税金減らす(=節税)ということは、要は、法人契約した社宅の賃料が経費になるということですが、仮に、会社が借りた物件をタダで使用させたり、一定基準以下の金額しか徴収していない場合には、その家賃相当額は、役員・社員の給与課税の対象となり、結果として、税金・社会保険料が増えてしまうことになるので注意が必要です!
そんな事態を避けるため、1ヵ月当たり一定額の家賃(賃貸料相当額)を、役員報酬・給与支払い時に差引いて支給するか、役員・従業員から別途振込んでもらうことになります。
賃貸料相当額は面倒でも「課税標準額」を使って計算した方がお得
そこで、社宅制度を運用する場合には、役員報酬・給与支払い時に「賃貸料相当額」を控除するか、役員・従業員から別途振込にて徴収することになるのですが、問題は「具体的な金額は、いくらならOKなのか?」ということです。
その答え(=具体的な計算式)は、国税庁HP※にも公表されており、算式部分を抜き出すと以下の通りです。
以前は、借上社宅の計算の場合、「(2)❶ 会社が支払う賃貸料の額の50%相当額」、つまり、家賃の半分を賃料相当額としていたことが多かった印象があります。
それは計算が簡単だからという理由もあったと思いますが、主に計算するために必要な固定資産税の課税標準額を知る術がなかったことが原因です。
借主が、固定資産税の課税標準額を知るには、貸主から土地・建物の課税標準額を教えてもらうしかなかったのですが、個人情報だからと拒否されることが多く、また、借主の立場では、役所から固定資産税評価通知を取得することもできませんでした。
しかし、税法改正により、平成15年度からは、借地・借家人についても公課証明等を請求・取得できるようになったので、借主であれば誰でも課税標準額を使用した上記の計算式を使えるようになりました。
上記の固定資産税の課税標準額を使用した計算式により算出される賃貸料相当額は、「賃料の50%」より安く、実際に支払っている賃料の約1~2割程度の金額になります。
つまり、役員・従業員個人の負担はより減り、会社の経費になる金額はより多くなるので、課税標準額を使用して賃貸料相当額を計算しない理由がありません!
社宅の契約や賃貸料相当額の計算の際などに注意すべきことは?
豪華社宅とみなされると全額が役員負担、節税効果はゼロです
社会通念上一般に貸与されている住宅等と認められないもの(=豪華社宅)については、固定資産税評価額を使った計算の適用自体が認められず、豪華社宅の賃貸料相当額は、会社が貸主に支払っている家賃そのものの金額になってしまいます。つまり、節税効果はゼロです。
この豪華社宅とみなされるかどうかの判断基準は、床面積が240㎡を超えている場合には、取得価格、支払賃貸料の額、内外装等の各種要素を総合的に見て判定されますが、たとえ、床面積が240㎡以下であったとしても、プールや防音室など役員の趣味趣向を著しく反映した、一般の住宅には設置されていないような設備等がある場合には、豪華社宅とみなされる可能性があります。
そのため、これから社宅となる物件を探す際などには、そもそもその物件が豪華社宅とみなされてしまうのではないか、という点は注意しなければいけません!
「評価額」と「課税標準となるべき額」のどちらを使用するのか?
固定資産課税明細書等をご覧になる機会はあまりないと思いますが、固定資産台帳(土地・家屋)には、土地について住宅用地特例が適用されている場合には、「評価額(特例適用前の価額)」と「課税標準となるべき額(特例適用後の価額)」の2つの金額が記載されていることがあります。
その場合、計算にどちらの金額を使うすべきかについては、法律通達等に明文化されていないため迷うところですが、専門誌の取材によると、主に、以下の理由により、「課税標準となるべき額(特例適用後の価額)」のが正しいとのことです。
- 住宅用地特例が適用される場合には、固定資産税が軽減され、社宅のコストが低くなること
- 企業側も福利厚生面から賃貸料を計算していること
社保の現物給与に該当する場合には報酬に含めた上で標準報酬月額を求める
現物給与とは、金銭以外で受け取る給与のことですが、社宅の場合、一定の算式で計算した金額を役員・従業員から徴収していない場合、その差額(算出された金額 ー 徴収済の社宅使用料)を報酬に含めた上で、標準報酬月額を求めることになります。
そして、この一定の算式は、前述の賃貸料相当額の計算式とは異なります。
計算式は「(都道府県別の)単価× 広さ(畳※)」と単純です。単価については、毎年4月に改定があり、日本年金機構から、価額一覧表が公表されるので、金額の算出自体はすぐできます。
※なお、広さは居住スペース(居間、寝室、書斎など)を計算対象とし、1畳当たりは1.65㎡で換算し計算します。
固定資産税評価額を使って賃貸料相当額を計算している場合、たいてい、差額が生じる( 賃料相当額 < 現物給与価額 )ので、その差額を標準報酬月額に含めるのを忘れないようにしましょう!