リスケ企業の正常化への道のりは、金融機関が想定する期間より長い
金融機関はリスケ審査を行う際「5年程度で通常返済に戻す」というシナリオを求めてきがちですが、現実には、そんな簡単に正常返済に戻すことはとても困難です。現実的な返済スケジュールは、以下の4つの期間に分かれます。少なくとも10年はかかると心得ておきましょう。
- 抜本的経営改善期
- 少額返済期
- 正常化に向けての返済額増加期
- 正常化手続き期
①抜本的経営改善期
リスケ開始1~3年目ぐらいは「抜本的経営改善期」です。
抜本的に経営を立て直す期間で、目標はできるだけ早期の月間収支黒字化。対策としては、①不要資産の売却、②経費の徹底的削減等となります。
この時点では資金繰りが厳しいため、売上を爆発的に増やすような施策を立てるのは非現実的です。売上は減少するか、よくても微増でしょう。この時期は収支トントン(収支が同じ)に持っていくのがせいぜいの状態。金融機関との交渉で「返済ゼロ」を実現し、地力を養いたいものです。
②少額返済期
4~5年目は「少額返済期」です。
それまで3年かけて経営改善を図っているため、業績は多少上向いているはずです。ここで月間収支が黒字化していないと、金融機関もリスケの継続を認めるわけにはいかないでしょう。うまく経営改善が進み、キャッシュフローも少ないながらも黒字化していれば、少額での返済を開始してよいと判断できます。
ここでの注意点は、黒字分を全額返済に回さないこと。キャッシュフローが黒字化していても、返済額は5~10万円ぐらいの少額に抑えましょう。そこで残った資金をプールし、6年目以降の形勢逆転に備えるのです。なぜならリスケしている間、金融機関は追加融資をしてくれないからです。また、投資をしなければ、業績を急に上げることもできません。
その投資用資金をプールする時期が、この少額返済期です。ここで金融機関からの突き上げに負けて返済額を大幅に増やしてしまうと、いざという時に攻勢をかけることができません。金融機関との交渉は、よりタフに行っていきましょう。
③正常化に向けての返済額増加期
6~10年目にかけては、債務を減らすための「返済額増加期」です。
5年かけて経営を立て直すことで、経営者の意識も経営体質も大幅に改善しているでしょう。月間キャッシュフローも増えているはずです。そうなると「増加した収益を返済に回してほしい」と、金融機関から強い要望が出されるでしょう。
しかし返済に回すのは、毎月生み出されるキャッシュフローの半額程度に抑えたいもの。その程度でも、これまでの返済額と比較すれば、金融機関の「返済増額要求」に応えることになります。たとえ金融機関に強く言われても、この時期でも「いざというとき」のために会社に一定程度のキャッシュは残しておかなければなりません。金融機関との交渉では、通常返済額の50%程度までに抑えられたら合格点だといえるでしょう。
④正常化手続き期
6~10年目で返済額を増やすことができれば、11年目には、償還期間が15年程度に収まっているところまで持っていけるでしょう。そこまでくれば信用保証協会の「経営改善サポート保証」を使って、今の債務を全額、保証協会の保証つき融資で借換えをします。
「経営サポート保証」は最長15年返済ですので、償還期間が15年程度に収まっていれば、ほとんどの場合は対応してもらえると思います。今のところ経営改善サポート保証(感染症対応型)制度は、2025年12月末まで延長されています。その後たとえこの「経営改善サポート保証(感染症対応型)制度」が終了しても、通常の「経営改善サポート保証」は残りますので心配はいりません。
既存の(通常の)経営改善サポート保証については、各信用保証協会のホームページ※で内容をご確認ください。
「金融機関が最低限納得できる経営改善計画書」の作成が重要
金融機関の担当者は「できるだけ早く回収したい」と考えているため、どうしても毎月返済額の多い「経営改善計画」を求めがちになります。
担当者が言うとおりの数字の経営改善計画書を作成し、その計画が8割以下の未達に終わると、「経営改善計画の実行可能性を疑われる」ことになり、翌年のリスケ交渉がきわめて困難になります。「金融機関が言うとおりに書いただけだ」と反発したくても、実行するのは経営者の責任だからです。
だから、最初のリスケの交渉の時には「金融機関が最低限納得できる経営改善計画書」の作成が重要になります。リスケに取り組まなくてはならなくなった場合は、近くにいる詳しい専門家のサポートを求められることをお勧めします。
そのための補助金もありますので、詳しい専門家であれば、補助金を利用した支援方法についてもアドバイスしてくれるでしょう。