アップストア(App Store)でアプリを購入した費用について、消費税の仕入税額控除を受けるためにすべきこと

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「Appleからの領収書」はインボイスの要件を満たしていない!

AppleストアでMac、iPhone、iPad等を購入すると、AppleIDに登録しているメアドに「請求金額のお知らせ」という件名で、納品書(PDF)が添付されたメール届きます。この納品書は適格請求書(インボイス)の要件を満たしているので、事業経費として落とす際はもちろん、消費税の仕入税額控除を適用するにも有効な書類です。

一方、App Store経由で、アプリなどのコンテンツ・サブスクサービスを購入した際にも「Appleからの領収書です」という件名で、メール本文に貼付けられた領収書が届きますが、こちらの領収書はインボイスの要件を満たしていません。

App Store経由で購入した場合の領収書は、以下の2つの方法で確認できます。
❶アップルにサインインして確認
❷メールに届いている領収書を確認
手順を示すほど複雑ではないのですが、備忘録代わりに記事を書きましたので、もし、領収書の確認の仕方が分からないという方は、過去記事をご参照ください!

なぜ、App Store購入分についてアップルはインボイスを交付しないのか?

AppleストアもApp Storeも、一見、同じAppleなのに、対応が異なるのは何故でしょうか?

それは、Appleストアのほうは、Apple自身(Apple Japan合同会社)が製品販売、サービス提供を行っているためインボイスを交付する義務があるのですが、App Storeのほうは、Apple(iTunes株式会社)はコンテンツを販売する場所(プラットフォーム)を運営している事業者に過ぎないため、現時点では、Appleがインボイスを発行する義務はないためです。

そのため、Appleにインボイスの発行依頼をしたところで、対応はしてくれません。

しかし、適格請求書(インボイス)の保存がないと、原則的には、消費税の仕入税額控除を受けることができないので、購入した側としては困ってしまいますよね?

【インボイスを保存しなくても仕入税額控除が受けられる事業者】
基準期間の課税売上高が1億円以下または特定期間の課税売上高が5千万円以下の事業者
2023年10月1日から6年間、1万円未満(税込)の課税仕入れについては「帳簿のみの保存」で仕入税額控除の適用を受けることができます(いわゆる「少額特例

簡易課税制度を適用している事業者
簡易課税制度選択届出書を提出していている事業者で、簡易課税の適用がある事業年度については、インボイスの保存がなくても、仕入税額控除の適用を受けることができます。

消費税の仕入税額控除を受けるためにアプリ購入者がすべきことは何?

そこで、考えられる対応としては、まずは、アプリ販売事業者のHPを調べ、サポート(メール・電話等)でインボイスへの対応を確認することです。

前述のとおり、App Storeにおいて、Appleはコンテンツを販売する場所(プラットフォーム)を運営している事業者に過ぎず、インボイスの交付義務があるのは、その場所(プラットフォーム)を利用して実際にアプリを販売提供している事業者です。

そのため、アプリ販売事業者がインボイス登録事業者であれば、HP等にインボイス制度への対応について、なんらかの記載があるはずです。

基本的には、インボイスを別途発行してくれる事業者が多いと思います。上の画像は、私が業務で使用しているアプリ「Moneytree」に関するものですが、運営会社であるマネーツリー㈱のHPに「インボイス制度に対応した領収書が必要な場合、一度サポートチームまでお問い合わせください」と記載があったため、中の方と何回かメールのやり取りをさせていただいた結果、無事、インボイスをPDFで受け取ることができました。

また、インボイスの交付はしないが、別の方法でインボイス制度への対応する旨を記載している事業者もあります。例として、家計簿ソフト「マネーフォワードME」を運営している「マネーフォワードホーム㈱」の対応をご紹介します。

アプリの販売は「不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う事業」に該当するため、適格簡易請求書(簡易インボイス)の要件を満たした書類を保存する必要がありますが、この要件は1つの書類で満たす必要はありません。複数の書類でもOKです。

【適格簡易請求書(簡易インボイス)に記載すべき事項】
❶適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
❷課税資産の譲渡等を行った年月日
❸課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
❹課税資産の譲渡等の税込価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
❺税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率

【保存書類とインボイス記載要件との対応関係】
1.Appleから発行される決済履歴・・・❷❸❹が記載されている
2.マネーフォワードMEプレミアムサービス利用規約・・・❶❺が記載されている
3.プレミアムサービスの料金表・・・❸❹が記載されている
⇒結果❶~❺全ての記載されているので、適格簡易請求書の要件を満たす!

したがって、Apple Account決済の場合は、HPに記載されている3つの書類を保存することにより、インボイス対応はOKとなるのです(これでも十分面倒くさいですけどね…)。

あとは、HP等にインボイス対応について記載や、サポートの対応がない場合ですが、これは「国税庁法人番号公表サイト」にて法人名から法人番号を調べ、「国税庁インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト」で法人番号から適格請求書発行事業者として登録されているか調べるしかないですね。登録がなければ、そもそもインボイスの発行はできない事業者なので、どうしようもありません。

ただし、区分記載請求書の要件を満たす請求書等を受領できれば、経過期間中は一定額を控除することができますので、その対応が可能かどうか問合せるのもありです。ただ、それも面倒ではあるので、金額と事務手続きの手間を天秤にかけて、仕入税額控除は諦める、というのも一つの手ではないでしょうか?

PF課税の導入により、2025年4月1日以降は、国外事業者提供分に限り、アップルからインボイスが交付されるようになる

消費税法の改正により、2025年4月1日以降に、国外事業者が、デジタルプラットフォームを介して行う消費者向け電気通信利用役務の提供で、かつ、特定プラットフォーム事業者を介して当該役務の提供の対価を収受するものについては、当該特定プラットフォーム事業者が当該役務の提供を行ったものとみなして申告・納税を行うことになります。

そして、App Store(iTunes株式会社)は、特定プラットフォーム事業者に指定されているので、国外事業者が提供するアプリの購入に限りますが、今後は、特定プラットフォーム事業者であるApp Store(iTunes株式会社)からインボイスが発行されるようになりますので、事務処理的には非常に楽になると想定されます。

なお、国内事業者が提供するアプリに購入については、現状と変わらず、国内事業者が交付するインボイスを保存する必要があるので、その点はご注意ください!

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